大西洋の小さな島の偉大なワイン、マデイラ島のマデイラ・ワインを統制するマデイラ・ワイン・刺繍・手工芸品協会、Instituto do Vinho, do Bordado e do Artesanato da Madeira, I.P(IVBAM)
主催のセミナーと試飲会が、アークヒルズ・クラブで12月11日(火)に開かれました。
IVBAM会長のパウラ・カバソ Paula Cabaçoさんが冒頭の挨拶の中で、「マデイラ・ワインにとって、日本はヨーロッパ市場に次ぐ、世界で二番目に重要な市場です」と述べました。日本では、徐々にですが、着実にマデイラ・ワインを楽しむ人が増えていると思います。続いて、今年二月にマデイラ島を訪問した、㈱サンティール・田崎真也事務所ディレクターの馬場祐治さんが、写真とともに、マデイラの歴史や文化、ワインについての講義をし、最後にワイン各種の試飲をしました。
マデイラ島はポルトガル本土から1100㎞、アフリカ大陸のモロッコ沖600㎞と、アフリカの方が近い、大航海時代の重要な中継地点として栄えてきた島です。1419年、エンリケ航海王子の命で探索に出たジョアン・ゴサルベス・サルコ等が発見した時、うっそうとした木に覆われていたためMadeira(木)という名前が付けられました。それ以後、ヨーロッパ人たちが植民し、ぶどう栽培とワインつくりが始まりました。大航海時代、赤道を越える航海の船に積まれていったワインのなかには、戻ってきたものもありました。それが素晴らしくおいしくなっていたので、これを島でつくろうということで始まったのが、ワインを温めて熟成を早める方法でした。それが現在のマデイラ・ワイン独特の製法を生み出したのです。
一つはエストゥファジェンという温水による加熱装置を付けたタンクで熟成させる方式。もう一つは、島の亜熱帯気候によって、自然に保てる温室状の倉庫で樽熟するカンテイロという方式です。
基本的に、使用されるぶどうは黒のテェインタ・ネグラと白のセルシアルSercial、ヴェルデーリョVardelho、ブアルBual、マルヴァジアMalvasiaです。他に、希少な品種として白のテランテスTerrantezと黒のバスタルドBastardoがあります。
詳細はhttp://www.vinhomadeira.pt/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E-542.aspx IVBAMの公式サイトをご参照ください。
試飲には、現在マデイラ・ワインを輸出している全6社から提供された6タイプがありました。
最初はMadeira Wine Company (MWC)の主要ブランドBlandy’sのVardelho 10 years old. Verdelhoはマデイラ・ワインの基本白品種4種のうち、辛口のSercialより少し甘いタイプが作られる品種です。Verdelhoと書いてあれば中辛口タイプを意味します。ほのかに甘いのですが、マデイラ島は火山島で、土壌が酸性なため、ぶどうにもきれいな酸味がのり、ワインも酸味がしっかりしています。そのため残糖分とのバランスがとれ、甘さを強く感じさせません。オレンジの皮のような香りや蜂蜜のような香りもあります。MWCは醸造プラントとは別に、首都フンシャルのメインストリートにマデイラ・ワイン博物館的存在のロッジを構える、歴史あるメーカーです。
http://www.blandys.com/section.php?id=1019
木下インターナショナル(株)www.kinoshita-intl.com
次はH.M.BorgesのBoal 10 years old. Boal(葡)=Bual(英)はVerdelhoの次に甘い、中甘口タイプになります。クルミのようなナッティーさ、バナナのようなトロピカルな香り、が魅力的です。町のまん中にありながら、昔の面影を濃く残したロッジで、現在も、伝統的な丸く平たいボトルにコモを巻いた製品も守っている唯一のメーカーです。いつ訪問しても従姉妹同志の女性二人が温かく迎えてくれます。
http://www.hmborges.com/pt/index_pt.html
(株)アデカ www.adeca.co.jp
3番目はVinhos BarbeitoのMalvasia 2000 Colheita Single Cask 39 a+e。Malvasiaは一番甘口です。けれども酸味とのバランスで、しっかりした骨格のある豊かなワインになっています。マデイラ・ワインには、基本の熟成年数のワインに周辺のいくつかのヴィンテージのワインをブレンドして5年とか10年とか、熟成年数を表記したものと、単一収穫年のものがありますが、これは2000年のヴィンテージです。しかもシングル・カスク、一つの樽で熟成したワインだけをボトリングしたものです。Barbeitoはマデイラ・ワインの可能性を創造する、研究熱心なメーカーです。新しい醸造・熟成プラントは、まさに最新の設備と工夫が随所に見られます。
木下インターナショナル(株)www.kinoshita-intl.com
次はJustino’s Madeira WinesのColheita 1999. コリェータColheitaというのは単一収穫年で、最低5年間樽熟したものです。品種名が表示されていないので、黒ぶどう、ティンタ・ネグラを使ったものです。紅茶のような香りのある甘口です。Justinoは、歴史は古いですが、機能性とアイデアに優れた生産工程でワインをつくる、モダンな感覚のメーカーです。
http://www.justinosmadeira.com/
サントリー(株)www.suntory.com /ミレジメ www.millesimes.co.jp
次はHenriques &
Henriques のSercial 15 years old. Sercialなので辛口です。15年ならではの落ち着いた風味があり、繊細で、やわらかな酸味、ほのかな苦みを持ちながら、しっかりした骨格と豊かさを備えたワインです。H&Hと略させていただきますが、その歴史は島が発見されてすぐ、15世紀から始まる古いメーカーです。
http://www.henriquesehenriques.pt/site.php
日本リカー(株)www.nlwine.com
最後はPereira D’Oliveira
Terrantez 1977です。Terrantezは本当に希少な品種です。Verdelho とBoalの間、まさにマデイラ・ワインの4段階ある甘さのまん中に位置します。複雑みがあって、まったりした感じが35年という年月を感じさせてくれます。D’Oliveiraは、19世紀のものも含め、長期熟成のヴィンテージ・マデイラをたくさん持っていることで有名です。
木下インターナショナル(株)www.kinoshita-intl.com
上の写真は試飲会場の各社のブースに並んだ、お勧めワインです。
素晴らしい東京の景色が見渡せる試飲会場では、ポルトガル・ワイン・ファンが集まって、楽しい雰囲気で試飲が行われました。勅時熟成マデイラもたくさんご出展いただいて、豊かな気分に浸らせていただきました。