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アリベスのアバデンゴ Abadengo de Arribes




 

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アリベスArribesという地域をご存知ですか? スペイン人に聞くと「素晴らしいところよ!」「美しい!」という賛辞が返ってきます。場所はマドリードの北西方面にある古都サラマンカの西側で、カスティーリャ・イ・レオン州のサモラ県とサラマンカ県にわたり、ポルトガルとの国境を流れるドゥエロ川に沿ってリボンがたなびくように細長く延びた一帯です。自然公園アリベス・デル・ドゥエロと被っています。

10月末、サラマンカに泊まり、アリベスに行ってきました。季節は最高。サラマンカはユネスコの世界遺産に登録されている街並みが美しいだけでなく、1218年創設というスペイン最古の大学があるだけに、学生の町としての活気もありました。

1025日(火)朝1100、ボデガス・リベラ・デ・ペラサスBodegas Ribera de Pelazas のオーナー、アントニオ・ウエルテス・ガルシア Antonio Huertes Garcíaさんの車でサラマンカからアリベスへ向って、一途西へ。

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 最初は牛がのどかに草を食べている放牧地や穀物畑などがあるなだらかな平地で、イベリコ豚が食べるどんぐりの樹があるデエサ(放牧地)も見られました。が、豚はいませんでした。緑の森などもあります。けれどもしばらくすると植物が変わり、灌木が増えてきました。「あそこに大きな岩が見えますか?アリベスの特徴です」とアントニオさんの挿す方向には巨大な岩が。もう放牧地も穀物畑もありません。サラマンカから1時間ほどでアリベスに入ると、明らかに土壌も気候も違います。標高700750m地帯です。

アントニオさんはまずアリベスの一番特徴的な地形を見せてくれました。深い、深い渓谷です。「深さ400mはあるでしょう」という断崖の底には青緑色のドゥエロ川が流れています。スペインワイン関係でドゥエロ川と言えばリベラ・デル・ドゥエロ(=ドゥエロ河畔)が思い浮かべられますが、あの地域で、ポプラの樹の間を流れているのと同じ川とはとても思えません。

地球の亀裂のような断崖絶壁の対岸側はポルトガルです。まさに大地を割って国境を作ったような景観です。 空には鷲が群れを成して飛んでいます。霧の中で見る大自然は幽玄かつ大胆でした。

 

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 次は畑を見に行きます。「アリベスというのはリベラと同じ意味の古い言葉です」とのこと。アントニオさんのボデガはペレニャ・デ・ラ・リベラ村にあります。現在D.O.P.アリベスhttp://doarribes.es/ にある11のボデガのうち、2つがこの村にあるそうです。

アントニオさんはレオン在住で、この村の出身ではありません。けれどもここを訪れた際、とても気に入り、ここでワインづくりを始めることにしたのです。なぜかというと、第一には唯一無二のテロワール、そして素晴らしい可能性を秘めた地場のぶどう品種があったからです。この地域は自然公園として夏場の人気観光地域ではあるものの、在住者は年々減り、過疎地化し、残された住民は高齢化するとともに、ぶどう畑は放置されていきます。その現状を押しとどめ、この地の力を生かしていくワイン造りに取り組んでいるのです。

アントニオさんの畑は、一つひとつは小さく、あちこちに散在しています。アリベスの地形は緩やかな傾斜地もあればかなり急なところもあります。土壌の主なベースは花崗岩や粘板岩で、畑の位置によって特性が違います。

気候は、内陸に位置していて寒暖の差が激しいはずですが、大西洋に近いため、その影響を受けて緩和されています。

D.O.P認定の黒ぶどう品種はフアン・ガルシアJuan García とブルニャルBruñalルフェテRufete、テンプラニーリョ、ガルナチャ、メンシアですが、彼が力を入れているのは、フアン・ガルシアとブルニャルというこの地域の特徴的な品種です。特にブルニャルは絶滅寸前なものを復活させています。どれも数十年から100年ものの古い畑です。

 

アバデンゴAbadengo

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アントニオさんのワインは「アバデンゴ」と言います。アバドという大修道院長とか総主教を意味する言葉がありますが、アバデンゴはその職、管区、資産といった意味です。

「アバデンゴ」のクリアンサには60年もののフアン・ガルシアを、「グラン・アバデンゴ」には100年もののフアン・ガルシアを使っています。

10月末のぶどう畑は美しく紅葉していました。ぶどうの樹は株仕立てで、枝をかき分けて覗くと、太い幹の表面は枯れたような表皮に覆われ、少し赤っぽい色の土にがっしりと根を下ろしています。この辺りは年間降水量が700mm以上と、スペインのワインの産地としては多い方ですが、水はけのよい条件にあります。点在する畑はボデガの担当者が状況を常に見回っています。


畑は全部で1213haありますが、ブルニャルの畑はまだ3haに至りません。「年間3000本しかボトリングできません」とのこと。

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ボデガはシンプルです。醸造家のフリオ・ガルボさんの案内で、2016年の収穫のフアン・ガルシアのワインをタンクからいろいろ試飲。畑ごとにタンクを分けているため、タンクごとに味が全然違います。これを樽熟して、ワインが出来上がります。

 「アバデンゴ・クリアンサ」はフアン・ガルシア100%。フレンチ・オークで1年熟成。野の赤いベリーのような香りで、酸やタンニンのバランスも良い飲みやすいワインです。

「アバデンゴ・セレクシオン・エスペシアル2004」はブルニャル15%、フアン・ガルシア85%で、フレンチ・オークとルーマニアン・オークで2年。その後瓶熟したものです。シルキーな口当たりの奥に、イチゴジャム、シナモン、クローブが感じられるエレガントなワインでした。機会があれば是非試していただきたいワインです。

 

 

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