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FENAVIN 2019 – 2

スペイン各地の地場品種 Variedades autóctonas de España

FENAVIN 2019では、ボデガが独自出展するブースだけでなく、数多くの自治州や原産地呼称(DO)が構える共同パビリオンのほか、同じ考え方のボデガの共同ブースや、複数ボデガの共同プロモーションを行う会社のブースなど様々な形態がありました。そんなおかげもあって、小さなボデガも参加できているのでしょう。やる気満々のワインメーカーにたくさん会うことができました。そして彼らの、“忘れられていた地場品種にスポットライトを!”という努力の結晶ともいえるワインをいくつか試すことができました。

スペインのブドウ品種と言えばテンプラニーリョTempranillo。DOリオハRiojaやDOリベラ・デル・ドゥエロRibera del Dueroを先頭に、スペイン各地で使われています。白ブドウでは、ガリシア州のDOリアス・バイシャスRías Baixasが中心地のアルバリーニョAlbariñoや、カスティーリャ・イ・レオン州のDOルエダRuedaの主要品種ベルデホVerdejo、そして最近はガリシア州の東部とそれに接するカスティーリャ・イ・レオン州の北西部が主要産地のゴデーリョGodelloも知られるようになってきました。黒ブドウでは地中海沿岸地域のモナストレルMonastrell、前出のゴデーリョと同じ地域を主産地とするメンシアMencíaの知名度も上がってきています。そして今注目されているのがガルナチャGarnachaです。アラゴン州が原産とされる品種で、スペインでは常に脇役的な働きをしてきていましたが、カタルーニャ州の山奥、DOプリオラトで最近はイベリア半島中央にあるマドリッド州の南西部、グレドス山脈Sierra de Gredos地帯、つまりDOビノス・デ・マドリッドVinos de Madridのサブゾーン、サン・マルティン・デ・バルデイグレシアスSan Martín de Valdeiglesiasや、それに接するDOメントリダMéntrida、その北に接するVC(Vino de Calidad:DOPのひとつでDOの予備軍)セブレロスCebrerosのガルナチャが注目されています。

けれども、世界最大のブドウ栽培面積(95万ha以上)を誇るスペインには数多くのワイン用の地場品種があります。そんななかから自分の地域の地場品種を復活させ、良いワインを造ろうとする意欲満々の醸造家たちによって使われた品種をいくつかご紹介します。

<白ブドウ>

☆アイレン Airén

スペインで最も栽培面積が広い品種で、約215,000ha、全体の約23%を占めています。スペインの白品種の約半分はアイレンと言っていいでしょう。ただ、この品種は全てがワインに使われているわけではありません。最大の産地ラ・マンチャではアイレンは蒸留されています。それはシェリーの酒精強化にも使われるし、ブランデーにもたくさん使われています。そんなわけで、アイレンで高品質ワインを造ろうというアイデアがわかなかったかもしれません。それを覆したのがDOリベラ・デル・ドゥエロでペスケラPesqueraを生み出したアレハンドロ・フェルナンデスAlejandro Fernandezです。2007年がファースト・ヴィンテージの、アレハンドロAlejadro+アイレンAirén=アイハイレンAlejairénという名のワインです。樽熟24か月。それまでのアイレンのイメージとは全く違った、厚みのあるしっかりしたワインでした。

そして今回FENAVINで出会ったアイレンは、カスティーリャ・ラ・マンチャ州の真ん中、まさに蒸留所が何か所もあるワイン村、トメジョソTomellosoのボデガ「ベルムVerum」のものでした。1788年、ロペス・モンテロ家が創設した会社をもとにし、2005年に当代のエリアス・ロペス・モンテロElías López Monteroが醸造家として立ち上げた新しいプロジェクトです。ワインの名前は「ベルム・テラ・アイレンVerum Terra Airén」。これはピエ・フランコPie Francoつまり接ぎ木していない樹のブドウで造られています。存在感がありながら、柔らかく喉を通っていくナチュラルな美味しいワインです。

☆アルビーリョ・レアル Albillo Real

 アルビーリョという品種名を聞いたのはかなり昔、リベラ・デル・ドゥエロでした。バルドゥエロValdueroというボデガがアルビーリョ100%のワインを造っていました。白品種なので、リベラのワインには補助的に使われるだけでした。そのため単一品種で造った白ワインはDOを名乗れません。このボデガは今もアルビーリョ100%の白ワインを造っています。ただ、この地域のアルビーリョはアルビーリョ・マヨールAlbillo Mayorといって、アルビーリョ・レアルAlbillo Realとは違います。

レアルの方は前出のDOビノス・デ・マドリッド、DOメントリダそしてVCセブレロスの認定品種ですが、そのほとんどがDOビノス・デ・マドリッドで栽培されているそうです。

DOビノス・デ・マドリッドでは「ボデガ・マラニョネスBodega Marañones 」や「ラス・モラダス・デ・サン・マルティンLas Moradas de San Martín」、DOメントリダでは「アラヤンArrayan」などの製品があります。また、前出のラ・マンチャのトメジョソにあるボデガ、「ベルム」も、もともとあった地場品種の復興を目指すプロジェクトの試験用の畑で栽培されたこの品種を使った「ウルテリオ・アルビーリョ・レアルUlterior Albillo Real」を造っています。

☆タルダナ Tardana

 タルダナ、別名プランタ・ノバPlanta NovaはDOウティエル・レケーナUtiel-Requenaの地場品種です。DOウティエル・レケーナといえば地場品種の黒ブドウ、ボバルBobalが知られるようになってきていますが、白ブドウのタルダナTardanaにも注目。タルダナという名前は、時間がかかるtardar、遅いtarde、晩熟のtardíaといった意味のある言葉からことばからきているだけあって、実が熟すのに時間がかかる品種です。

レケーナのボデガ、「ベラ・デ・エステナスVera de Estenas」のフェリックス・マルティネス・ロダFélix Martínez Rodaさんに伺うと、この品種は200haほどしか残っていないそうで、果皮が厚いため、収穫後も日持ちがよく、スペインの年越しの時にブドウの実を12個食べる習慣がありますが、その時に使われるそうです。 試したワインはベラ・デ・エステナスの「ラ・タルダナ・デ・エステナスLa Tardana de Estenas 2018」。セメントタンクで発酵後、700ℓのアンフォラで2か月熟成したものです。ブドウの皮をむいたときに出てくるジュースのような、ちょっと草っぽさもあり、酸味もバランスの良いワインでした。

 

<黒ブドウ>

☆マンド Mandó

 この品種はいわゆるレバンテLevanteと呼ばれる地中海沿岸地域の地場品種で、DOバレンシアValenciaのなかでもモイシェントMoixentという南部内陸地域では品質の高いワインが造られています。「セレール・デル・ロウレCeller del Roure」は以前から、オーナー醸造家のパブロ・カラタユPablo Calatayudがマンドに注目していて、「サフラSafrà(マンドとガルナチャ・ティントレラ)」、「パロテットProtet(マンド、モナストレル、アルコスArcos)」というマンドをメインにしたブレンドタイプの赤ワインを造っていましたが、今回はマンドで造ったブラン・ド・ノワールがありました。「レス・プルネスLes Prunes」。白とはいえ、ほのかにピンクがかった色で、フルーティな香り、柑橘系の酸味とのバランスが良く、フレッシュなフィニッシュの、珍しい感覚のワインです。

カタルーニャ州のDOプラ・デ・バジェスPla de Bagesで12世紀からブドウを栽培してきたというロケタRoqueta家のバレンティ・ロケタValentí Roquetaが1983年に創設したボデガ「アバダルAbadal」もDO認定品種ではありませんが、地場品種としてマンド100%のワインを2017年に発表しています。

 

☆プリエト・ピクドPrieto Picudo

 スペイン中央北部のカルティーリャ・イ・レオン州の黒ブドウ品種で、DO ティエラ・デ・レオンTierra de Leónの主要品種です。同産地にはアルバリンという白品種もあり、いずれもまだ知名度が低いですが、地場品種として、造り手たちはよいワインを生み出しています。ただ、今回はカスティーリャ・ラ・マンチャ州のクエンカ県を中心にトレド県にもかかるDOウクレスUclésにあるボデガ、「ボデガス・ラ・フィンカ・エスタカダBodegas la Finca Estacada」が造るプリエト・ピクドに出会いました。「ハロー・ワールドHello World」というDO認定外の品種で造るためIGPティエラ・デ・カスティーリャTierra de Castillaのワイン4点のシリーズの一つです。プリエト・ピクド以外はフランス品種。いろいろ試しているボデガです。

☆ティント・ベラスコTinto Velasco

前項の「ボデガス・ラ・フィンカ・エスタカダBodegas la Finca Estacada」のもう一つのチャレンジが「オチョ・イ・メディオOcho y Medio」シリーズです。畑の標高が850メールということからつけられた名前です。その一つが「ティント・ベラスコ」。他では聞いたことがない品種ですが、カルティーリャ・ラ・マンチャ州トレド県では19世紀に植えられていたとのこと。色の濃い、酸味もある、黒いベリーのようなイメージのワインでした。

 

☆ルフェーテ Rufete

 

 ルフェーテはVC(DOPですが、DO認定の前段階)シエラ・デ・サラマンカSierra de Salamancaの主要認定品種で、絶滅の危機にさらされていたものを復活しようとしているところです。他の認定品種テンプラニーリョとガルナチャ・ティンタとのブレンドが多いですが、ルフェーテ100%にも力を入れています。「ボデガ・イ・ビニェド・ロチャルBodega y Viñedos Rochal」の「カリスト・ルフェーテ Calixto rufete」や「ラ・ソラ(狐の意味)La Zorra」 といったボデガの製品はラベルも素敵です。

他にこの品種に注目しているのはマスター・オブ・ワインのアンドリース・クバックAndreas Kubach MWとサム・ハロップ Sam Harrop MWを擁するプロジェクト「ペニンスラ・ビティクルトーレスPenínsula Viticultores」です。DOウクレスの大手「フォンタナFontana」をはじめとして、いくつか手掛けるボデガのなかで、「ビノ・デ・モンターニャVino de Montaña」というスペイン中央山系Sistema Centralの標高の高い畑に注目したプロジェクトではグレドス山脈のガルナチャを中心に、前出サラマンカに接するシエラ・デ・ガタSierra de Gata地域のルフェーテ、そしてピヌエラPinuelaという品種も使ったワインを造っています。

☆トルトシTortosí (Valencia)

 この品種のワインを造っているのは「アンゴストAngosto」というDOバレンシアValenciaのボデガです。ただ、社名は「ビベロス・カンブラViveros Cambra」という1905年創業のブドウの苗木栽培会社で、2005年からその一部門としてワイン造りに参画しています。現在4代目が継承し、忘れられていたワイン用の地場品種を調査し、復活させることに力を注いでいます。

その一つがトルトシTortosíという白ブドウ品種です。カスティーリャ・ラ・マンチャ州の東の端、アルバセーテ県のカウデーテとタラソナという、バレンシア州に接する地域の原産だそうで、DOPバレンシアの認定品種に含まれています。そんなローカルな品種を単一でワインにしたのが「トルトシ・デル・アンゴストTortosí del Angosto」です。天然酵母で、皮と種も一緒に発酵。フレンチ・オーク樽とアメリカン・オーク樽を使って熟成したのが「トルトシ・デル・アンゴストTortosí del Angosto」の「ロブレ・フランセスRoble Francés」と「ロブレ・アメリカノRoble Americano」です。白い果実やハーブっぽさがあり、けっこうボリューム感もあり。フレンチ・オーク熟成は締まった感じで、アメリカン・オーク熟成は華やかさがあり、2つの違いが分かりやすい、面白いワインでした。

FENAVINでは、各地で地場品種の復活に力を注ぐ人々、オーガニックやビオの造り手たちなど、スペインの自然に根差したワイン造りをする多くの人々に合うことができ、スペイン・ワインの底力を感じました。

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