1日目
最初のボデガはジオパーク・北部のベナルアという村にある「パゴ・デ・アルマラエスPago de Almaraes」です。グラナダを出発してから平坦な地帯を走っていましたが、徐々に高度が上っていく感じです。周囲には山が見えています。
ボデガが所有する60haの畑は2か所に分かれていて、いずれも標高900~1200mの地帯にあります。訪問した畑は平坦で、瓦礫がゴロゴロしているといった感じでかなり大きめの石も多い土壌でした。垣根作りに仕立てられたブドウの樹の列の背景には雪をかぶったシエラ・ネバダが控えています。
アルマラエスという地名はアラブ語で供給、補給といった意味だそうで、この地がかつて食料供給地だったことがうかがえます。ボデガの建物は2023年にリニューアルされたものです。ワインの熟成には自然の洞窟が最適だということで、山の中に掘られたスペースに醸造設備から樽熟・瓶熟庫などボデガの機能が集約されています。
ワインは白ではモスカテル・デ・グラノ・メヌド、シャルドネ、ソービニヨン・ブランメンのブレンド・タイプの「メンカルMencal」、カベルネ・フラン100%のロゼ「メメントMemento」、赤では標高1200m地帯で栽培されたシラー100%で、アメリカン・オーク樽で4か月熟成した「チコテChicote」を試飲。写真の黒いボトルはDOP(保護原産地呼称)グラナダではなく、IGP(保護地理的表示)、つまり*VT(ビノ・デ・ラ・ティエラ)デ・アルティプラノ・デ・シエラ・ネバダAltiplano de Sierra Nevada認定のワイン「メメントMemento」でした。使用品種はカベルネ・ソーヴィニョン、テンプラニーリョ、カベルネ・フラン。カベルネ・フランはDOPグラナダ認定外の品種のため、IGPになっているのでしょう。ボトルのデザインもステキなワインです。
*IGPアルティプラノ・デ・シエラ・ネバダ はグアディス、バサ、ウエスカルの3地域にしか適用されない。ベナルアはグアディス内の村。
次は「ボデガス・フォンテデイBodegas Fontedei」です。フォンテデイはデイフォンテ村にあります。ローマ時代からあった地名で、そのデイとフォンテを入れ替えてボデガの名前にしたとのこと。ロゴはアルハンブラにある噴水のライオンを図案化したものです。
ボデガはベガ・デ・グラナダからギリギリ外れるモンテス・オリエンタレス(東方の山々という意味でベガ・デ・グラナダ地区の北に位置する)地区にあります。畑は3か所に分かれていて、一つはボデガと同じくデイフォンテに、もう一つはベガ・デ・グラナダ地区に、そして最後の一つはアルアマ・デ・グラナダというグラナダ県の南西端の地区にあります。樹齢40年以上のモスカテル・デ・アレハンドリアを栽培している粘板岩質土壌の畑は海岸線に近く、標高800~1,000mで傾斜度60%とのこと。DOPグラナダの畑は傾斜度がきついのが普通らしいということが、日々体感出来ました。
ボデガは醸造家のアントニオ・ロペスAntonio Lópezさんが案内して下さいました。2002年創設で、ステンレス・タンク、コノ(大きな木樽)、バリック、アンフォラなどが意図するワインによって使い分けられています。
白ではステンレス・タンク発酵のソービニヨン・ブランとフレンチ・オーク樽発酵のシャルドネのブレンドの「アルバヤダAlbayada 2022」。テンプラニーリョとシラーのブレンドで樽熟3か月の「リンダラハLindaraja 2022」。「ガルナタGarnata 2017」は、樹齢40~50年のガルナチャ・ティンタに30%シラーをブレンドしたものとのこと。このガルナチャの畑は2haしかなく、1haに1000本しか植わってないという希少品です。「プラド・ネグロPrado Negro」はテンプラニーリョ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、ガルナチャのブレンドで、ボリューム感のあるワインです。珍しいものでは「ティナハスTinajas 2017」が、テンプラニーリョとシラーのブレンドを125ℓ入りのティナハ(素焼きの壺)3個で5か月間熟成したもので、年間300~350本しか生産していないとのことです。
他に「エルビラElvira」という白ワインのシリーズでは、モスカテル・デ・グラノ・メヌド100%とビヒリエガ100%がありました。アンダルシアの地場品種ビヒリエガはフレンチ・オークの古樽で2か月熟成させているとのことで、2020年はグレープフルーツや、和風柑橘系の香りが優しい感じですが、2021年は骨っぽく、シャキッとしたタイプでした。
2日目
この日はポニエンテ地区の中でも南の端といっていい、ヘテという村にある「カルベンテCalvente」を訪問します。迎えに来てくれたのはオーナー・ファミリーで、現在ワイン造りを仕切っているオラシオ・カルベンテHoracio Calventeさん。シエラ・ネバダと地中海の間のチャパラル山にあるという畑を見学するべく、グラナダの町から南に向かって走ります。ボデガのウェブサイトにCALVANTE Mountain Wineとあるように、畑はまさに山の中にありました。
2か所ある畑の一つは海岸線にも近い位置にあります。標高700~1,000m地帯で、急勾配のサンプルのような傾斜のきつい畑です。土壌は粘土質の石灰質。ここで樹齢50~90年のモスカテル・デ・アレハンドリアが栽培され、素晴らしい辛口白ワインが造られています。黒ブドウでは樹齢20~40年のカベルネ・ソーヴィニョン、テンプラニーリョ、メルローがあります。もう一つの畑はマラガ県と隣接する位置で、平均標高850m地帯にあり、傾斜度40%。栽培されているのは黒ブドウ品種だけで、シラー、カベルネ・ソーヴィニョン、テンプラニーリョ、メルローです。
オラシオさんによると、畑は30年ほど前、父親が買い始めたものからあり、植わっている品種は、15種類ぐらいはあるとのことでした。これからブドウを植えようと思っているという土地は標高1,000m以上。
伝統的製法のスパークリング「ラニア・ブルット・ナトゥレRania Brut Nature」はモスカテル・デ・アレハンドリア100%で瓶内二次発酵および瓶熟期間が24か月以上で、フレッシュな辛口。オーナーの名字でありボデガの名前「カルベンテCalvente」を持つのはモスカテル・デ・アレハンドリア100%の辛口白ワイン。エレガントでフレッシュでバランスの取れた自信作。ラベルはボトルを横にして見ると、シエラ・ネバダのレリーフになっているのが分かります。「ギンダレラGuindalera」は様々な要素が一体化したバランスの良いいブレンド・タイプの赤。最後は熟成タイプの赤「カステリェホCastellejo」。黒ブドウ4品種のブレンドで、よく熟したフルーツが感じられる表現力豊かなワインでした。
次の「セニョリオ・デ・ネバダSeñorío de Nevada」は「カルベンテ」とグラナダ市の間ぐらいに位置しているため、ポニエンテ地区の中をほぼ真っすぐに北、つまり内陸に向かって走ります。ボデガの説明ではアルプハラへの入り口まで広がる地域に21haの畑を所有しているそうです。標高650m。グラナダ市の標高が684mなので、同じぐらいの感覚でしょう。土壌は粘板岩質でミネラル分に富んでいます。寒暖の差が激しい地域なのでブドウの実はゆっくり熟し、収穫は10月に行われるそうです。現在栽培している品種はシラー、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、テンプラニーリョ、プティ・ヴェルド、ガルナチャ・ティンタそして白品種のヴィオニエです。
試飲は醸造家のチェマさんが発酵タンクから白のビヒリエガ、そしてビヒリエガとヴィオニエのブレンドを試させてくださいました。次はガルナチャのロゼ。樽からはガルナチャ・ティンタ、シラー、そしてカベルネとシラーのブレンド。樽は2回目と4回目使用のものを使っているそうです。
ボトルからはこのボデガの看板商品ともいえる「ブロンセBronce(銅)」、「プラタPlata(銀)」、「オロOro(金)」のトリオです。「ブロンセ」はカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、シラー、プティ・ヴェルド、ガルナチャ・ティンタ、テンプラニーリョを使って、フレンチとアメリカンの2種類のオーク樽で11か月熟成。「プラタ」はシラー、カベルネ・ソーヴィニョン、テンプラニーリョのブレンドでフレンチとアメリカン・オーク樽で11か月熟成。「オロ」はシラー、カベルネ・ソーヴィニョン、プティ・ヴェルドを使用しフレンチ・オーク樽で11か月熟成したもの。微妙に配合が違うのが面白いシリーズです。
グラナダのワインIIIに続く