グラナダのワインの産地を訪問しました。グラナダはアルハンブラ宮殿があまりにも有名すぎて、その他の世界に目が向けられる機会が少ないかもしれません。もしかしたらシエラ・ネバダSierra Nevadaのスキー場とか、IGPトレベレスTrevélez( Indicación Geográfica Protegida Jamón de Trevélez)の生ハム(白豚使用)とか、グラナダという名前と関係なくご存じかもしれませんが、ワイン産地としてのグラナダは、残念ながら、まだ知名度があまり高くありません。
11月初旬、DOPグラナダDenominación de Origen Protegida Granadaの統制委員会にお取り計らいいただき、認定地域のボデガを9軒訪問させていただきました。
出発地グラナダ市はグラナダ渓谷Vega de Granadaと呼ばれる、シエラ・ネバダを水源とするアンダルシアで2番目に長いヘニル川とその支流域にあります。農耕に向いた平坦な地形で、見晴らしがよく、毎日向かう方角は違っても、景色のどこかに雪をかぶったシエラ・ネバダ山脈が見えているのがグラナダならではです。
グラナダは、スペイン各地のワイン産地同様、ローマ時代にはワインが造られていた痕跡を残す遺跡が発見されています。けれどもDOPグラナダの認定公告は2018年と、新しい原産地呼称です。スペイン南部、アンダルシア自治州のグラナダ県全体をカバーする広大な認定地域で、3つのサブゾーンに分類されています。
一番広いのが中央から北部を占めるジオパーク・北部Geoparque-Norteで、名前の通り*ユネスコの世界ジオパークに認定されている地域です。
スペイン政府観光局の資料によると「500万年の歴史を物語る環境を訪れる機会を提供しています。古代の海の存在を確認したり、かつて海中溶岩だった山を見たり、ヨーロッパで最も広範囲に及ぶ第四紀の脊椎動物の古生物遺跡群を訪問することができます。人間の通過はまた、最も近代的な生物気候の家の初期の例である山の中に掘られた洞窟住居がある風景に、その痕跡を残しています。」とのこと。まさにその形跡が目で見られる地域です。
次がポニエンテPoniente。太陽が沈む方角にある地域ということで、グラナダ市を含む、県の西部で、西隣のワイン産地DOPマラガ&DOPシエラス・デ・マラガと接しています。前出のヘニル川が北部のスブベティカ山脈Cordillera Subbéticaと南部のベティコ山脈Sistemas Béticosの間を流れている地帯です。
特徴的なのがコントラビエサ・アルプハラContraviesa – Alpujarraです。グラナダ県の南端で東はアルメリア県と接する地域です。地中海に面してはいるものの、ビーチの背には山が迫り、イベリア半島最高峰のムラセンMulhacén山を筆頭に3000mを超す峰々が連なるシエラ・ネバダが聳えています。ブドウはこの山岳地帯の山肌で栽培されています。
DOPグラナダを一言で語るのは難しいですが、地中海性気候と内陸性気候、そしてシエラ・ネバダの影響というのが大雑把な特徴と言えるでしょう。スペインのどこよりも晴れの日が多く、認定ブドウ畑の50%は標高1000m以上と、標高が高いため、受ける太陽放射量が多いことから、ブドウは抗酸化物質の含有量が多くなります。ブドウ熟成期間の最高気温は30~35℃ですが最低気温は13~15℃に下がります。このように寒暖の差が激しいため、ブドウがゆっくり熟していき、糖、酸、ポリフェノールの含有量が上がり、これがワインの特徴となって表れているとのことです。年間降水量は平均450㎜ほどです。
ワインのタイプは白、ロゼ、赤、そして過熟ブドウで造る甘口と伝統的製法のスパークリングがあります。
認定ブドウ品種は白が地場品種のビヒリエゴVigiliego(ビヒリエガVigiliega)を筆頭に、モスカテル・デ・アレハンドリア、モスカテル・デ・グラノ・メヌド、ペドロ・ヒメネス、パロミノ、ハエン・ブランコJaén Blanco、トロンテスTorrontés、ブランカ・ゴルダルBlanca Gordal、マカベオがスペイン品種で、他にソービニヨン・ブラン、シャルドネ、ヴィオニエがあります。黒品種はテンプラニーリョ、ガルナチャ・ティンタ、モナストレルそしてロメがスペイン品種で、あとははフランス品種のカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルロー、シラー、ピノ・ノワール、プティ・ヴェルドです。
ただサブゾーン、コントラビエサ・アルプハラは少し違います。白ではパロミノ、トロンテス、トロンテス、ブランカ・ゴルダル、マカベオが除外され、黒ではモナストレルとロメが除外され、スパークリングにはビヒリエゴ、シャルドネ、ピノ・ノワールしか使用できません。他にも栽培規定など、特別条件があります。
現在、統制委員会のサイトによると、ブドウ栽培面積約300ha、ボデガ数20強、年間出荷量30万本強とのことです。
*ジオパーク
2024年3月の時点で、48か国の213カ所がユネスコ世界ジオパークとして認定されていて、スペインには17か所ある。
2015年11月17日、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の加盟国195カ国の批准を経て設立した事業。この事業の趣旨は国際的に価値のある地質遺産を保護し、そうした地質遺産がもたらした自然環境や地域の文化への理解を深め、科学研究や教育、地域振興等に活用することにより、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現することであり、ユネスコの国際地質科学ジオパーク計画(IGGP)の一事業として実施されている。前身である「世界ジオパーク」は、ユネスコの支援のもとに2004年に設立された「世界ジオパークネットワーク」(フランスのNGO)が審査・認定に関する業務を実施していた。
**グラナダのワインIIに続く