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FENAVIN 2025

FENAVIN 2025

 ラ・マンチャの真ん中にあるシウダ・レアルCiudad Realで隔年に開催されるスペイン国産ワイン展FENAVIN(Feria Nacional del Vino)は第13回を迎えました。

FENAVINは2001年に始ったワインフェアで、当初、正直なところシウダ・レアルと聞いて、いったいどうしてラ・マンチャのまん中なんかで開くの?といった漠然としたイメージしかありませんでした。けれども年々規模を拡大し、海外からのバイヤーも多く訪れ、ワインビジネスには大いに貢献してきています。

私、個人的には2007年、「Una vida dedicada a la defensa del vinoワインに捧げた人生」という賞をいただいているので、思い入れのあるフェアでもあります。

スペインで開催されるワインフェアにも波があるようです。以前はバルセロナの食品展アリメンタリアのワイン・セクションが必須でした。アリメンタリアは、調べてみると、1976年に始った40年にのぼる歴史のある食品展です。1975年にフランコの独裁政権が終焉を迎え、スペインが経済的に苦しかった時でしたが、新たな時代の始まりに際しバルセロナ見本市Feria de Muestras de Barcelonaが開催されました。アリメンタリアはそのなかの一つのセクションとしてスタートしたそうです。その後アリメンタリアは巨大な食品展に成長します。バルセロナ中心部から地下鉄に乗って会場駅に着くと、そこから巨大な会場に向かい、ワイン・セクションにたどり着くのが一仕事といった感じでした。そうするうちにアリメンタリアの食品部門はますます巨大になり、今ではショークッキングやコクールなども行われているようです。そんな動きのなかワインのセクションが独立する形で2020年に始まったのがバルセロナ・ワイン・ウィークBarcelona Wine Week略してBWWです。年々出展者も来場者も増え続け、注目度はどんどん上がっています。

 一方でFENAVINは定着した国産ワイン展の位置を確保しているようです。ここでは毎回、新しい出会いがあり、面白いものが見つかります。今年は5月6日~8日の3日間で開催されました。

長年のお付き合いのある原産地呼称(DO)ビノス・デ・マドリD.O. Vinos de MadridやDOリアス・バイシャスRias Baixasなどは統制委員会のブースを訪れて、試飲させていただきました。現在対日プロモーションをお請けしいているDOウティエル・レケーナUtiel-Requenaは、売り出し中の熟成タイプのボバルのセクションが、試飲する方々の興味を引いていました。

同じDOウティエル・レケーナでもボデガス・ビベBodegas Vibeやパゴ・デ・タルシスPago de Tharsis、イスパノ・スイサスHispano+Suizasなど、独自のブースを構えているところもあります。このDO最大のメーカー、コビニャスCoviñasは多くのブランドを持っていることもあり、ブースは常に来訪者でいっぱいでした。

向かいには「Ecologicos por Nnaturaleza自然にエコ」とタイトルを掲げたグループのブースがあり、そこにはDOウティエル・レケーナの「ベガルファロVegalfaro」が、同じくボバルのワインを売り出し中のDO マンチュエラManchuelaのフィンカ・エル・モラールFinca El Molarと並んで出店。その並びにはアンダルシアの内陸、コルドバ県にあるDOモンティーリャ・モリーレス Montilla-Morilesで、ブドウのオーガニック栽培から始めて、クリアデラとソレラの熟成システムを作り上げてフィノを生産しているボデガ、ロブレスRoblesも出展していました。

面白かったのは「アルチザン・ワイン・アトラクションArtizan Wine Attraction」というグループです。色とりどりの風船を上げているので目を惹いただけでなく、アルチザンと自称するだけあってワインも負けずに面白く興味を引かれました。最初に出合ったのは「クーパー・セラーズ/風のワインCooper Cellars/Vinos del Viento」のマイケル・クーパーMichael Cooperさん。カリフォルニア生まれですが、現在アラゴン州のDOカンポ・デ・ボルハCampo de Borjaでワインを造っています。彼はこの地域の地場品種の古木の畑を探しては入手し、大切に育てています。古木の単一畑から、そのテロワールを表現したワイン造りをするボデガとしてはこの地域のパイオニアとのこと。興味深いワインたちでした。

その隣は「5匹の蟻5 Hormigas」。地中海沿岸地域のムルシア州の標高900m地帯に5区画の畑を持ち、地場品種のモナストレルで、各区画の個性を表現したワインを造っています。4本あるワインは全てモナストレル100%でいて、それぞれ個性が違います。

「セクスト・エレメント6º elemento」6番目の要素という名のボデガ。バレンシア州の内陸、DOウティル・レケーナ内のベンタ・デル・モロVenta del Moroという町にありますが、DOには属していないようです。栽培品種はこの地域の在来品種の黒ブドウのボバルBobal、白ブドウのタルダナTardana、そしてごくわずかな栽培者しかいないというロイヤルRoyalに力を入れています。https://vinosextoelemento.com/

このグループには「ボデガス・デル・リオBodegas del Rio」というサンルーカルのマンサニーリャのボデガも入っていました。“川のボデガ”という名前です。その“川”とはグアダルキビール川のことです。ボデガの裏はグアダルキビール川の砂浜、目の前はドニャーナ国立公園というロケーション。サンルーカルのなかでも特別の条件で熟成されるマンサニーリャは格別。

このグループは他のボデガも面白そうでしたが、時間切れ。残念でした。

ワインフェアでは久しぶりに再会するボデガもたくさんあります。「ピケラスPiqueras」もその一つです。D.O.アルマンサAlmansaというカスティーリャ・ラ・マンチャ州の南西の端でバレンシア州とムルシア州に接している内陸の産地です。1915年から4代にわたってワイン造りを続けているファミリーのボデガです。この地域のブドウ品種ガルナチャ・ティントレラやモナストレルをきれいな造りでまとめています。

DOカナリア諸島Islas Canariasのコーナーでは、テネリフェTenerife島のオロタバOrotava地域にある「ビニャティゴViñatigo」のオーナー、フアン・ヘスス・メンデスJuan Jesús Méndezさんにお会いしました。1990年からテネリフェ島の特殊な条件の中、いろいろなことを試しながら、その土地を表現した、地場品種のワインを造ってきている方です。2000年代初め頃から何度か訪問していますが,いつも珍しい地場品種の名前が飛び交い、畑の仕立て方の工夫なども見せていただいています。現在はDOカナリア諸島の会長を務めていらっしゃいます。

 

新しい発見の一つは、2025年3月にビノ・デ・パゴVino de Pago(VP)に認定された「フィンカ・リオ・ネグロFinca Rio Negro」です。グアダラハラというマドリッドから北西に向ってサラゴサに行く途中にあり、ワイン産地として知られた地域ではありません。中央山系の山裾に600Haの土地を持ち、その中で1998年からブドウを栽培し始め、現在は42Haになっています。標高が950~1000mと高く、自然に囲まれた環境で、黒ブドウはテンプラニーリョを中心にシラー、カベルネ・ソーヴィニョン、メルローを栽培。白はゲヴェルツトラミナーだけという独特な選択です。他に例を見ない地域なのが興味を引きます。

VP関連で、たまたま発見したのが「Union de Vinos de Pago Certificados(UVPC)」というグループです。VP認定ボデガのユニオンのようです。ブースにいた女性は何も知らないようでしたので、パンフレットをいただいてきました。2020年に活動を始めたグループで、現在14のVPのボデガがメンバーになっているようです。アイレスAyles、オタスOtazu、カサ・デル・ブランコCasa del Blanco、イラーチェIrache、ロス・バラゲセスLos Balagueses、ベラ・デ・エステナスVera de Estenas、ビカリオVicario、ギホソGuijoso、シルススCirsus、アリンサノArinzano、ラ・ハラバLa Jaraba、マルトゥエMartúe、チョサス・カラスカルChozas Carrascal、ビサールVizarです。ラ・ハラバのフランシスコ・フェルナンデスFrancisco Fernaádezという方が会長で、目的はVPを消費者に正しく理解してもらうことのようです。

UVPCのパンフレットにも登場するのがグランデス・パゴス・デ・エスパーニャGrandes Pagos de España=GPEです。元祖VPのグループです。

GPEはグランクリュと説明していますが、フランスのシャトーのイメージと言った方が的確かと思います。会員のボデガも“シャトー“という表現をよく使っています。つまり所有地内に畑と醸造所を持ち、そのテロワールを表現したワイン造りをするボデガということです。2000年にカスティーリャ・ラ・マンチャにある5社が集まって作ったグループ、グランデス・パゴス・デ・カスティーリャGrandes Pagos de Castillaが基礎になっています。その提唱者がマルケス(公爵)デ・グリニョンMarqués de Griñón カルロス・ファルコCarlos Falcóさんで、スペインのワイン法にVPのカテゴリーを設けるよう働きかけた方です。2003年に新設されたこのカテゴリーで最初に認定されたのは、当然ながら、彼のボデガ、ドミニオ・デ・バルデプサDominio de Valdepusaです。2004年にGPEは会員12社で、包括範囲を全国に広げ、グランデス・パゴス・デ・エスパーニャに改名しています。現在GPEには31社が加盟していて、そのうちフィンカ・エレスFinca Élez、マルケス・デ・グリニョン・ファミリー・エステイツMarqués de Griñón Family Estates (GPEではこの名称を使用。VPはデエサ・デル・カリサル)、パゴ・デ・バリェガルシアPago de Vallegarcía、アバディア・レトゥエルタAbadía Retuertaの5社がVP認定です。

FENAVINでは各種セミナーやプレゼンテーションも行われていました。カスティーリャ・ラ・マンチャ州主催のワインセミナーでは、ワインのエキスパート、マリア・アントニア・フェルナンデス・ダサMariía Antonia Fernández Daza さんが最新データを持って、スペイン全体の48%のブドウ畑を持つカスティーリャ・ラ・マンチャ州のワイン産業の現状を紹介しました。大量生産の産地としてのイメージが強い地域ですが、実はVPの発祥地でもあり、小規模な品質本位のボデガが増えている地域でもあります。

ますます楽しくなっているスペインワインを駆け足でつまみ食い(飲み)したFENAVINでした。

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