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ビニサレム=マヨルカ Binissalem – Mallorca

マヨルカ島と言えば、だれもが、ああ、あの地中海の島ね!、国際的なリゾート地よね、ショパンがジョルジュ・サンドと住んでいた島でしょう、など等、すてきなイメージが広がります。

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では、ビニサレムは?といえば、こちらはあまりピンとこない人が多いかと思います。スペインワインの関係者ならワイン産地として知っているかもしれませんが、そうでない人たちが知っているかというと、疑問です。 

そう思っているのは私だけではありませんでした。ビニサレムの原産地呼称統制委員会自体がそう思っていたのでした。

去る53日、オランダのアムステルダムから直行でマヨルカという、これまでにないコースでスペイン入りしました。聞くと、ドイツからは1日に何便も直行便があるのだとか。ヨーロッパ北部の人たちにとってマヨルカ島はあこがれの太陽の島なのでしょう。首都パルマ・で・マヨルカの街にはドイツ語や英語が氾濫していました。

 

ワイン・デイズ・マヨルカ Wine Days Mallorca

さて、テーマのワインですが、今年、2014年に原産地呼称ビニサレム統制委員会は「第1回ワイン・デイズ・マヨルカ」を開催しました。510日から18日まで、9日間にわたってワイン関連の様々なイベントが行われ、地域の人たちはもちろんのこと、多くの観光客がワインを堪能しました。

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510日はビニサレムの町のサンタ・マリア・デ・ロビネス教会の前の広場で「ワイン・デイズ・フェア Feria Wine Days」の開会式が行われました。当日はヒガンテと言われる巨大な人形が街を練り歩き、ステージでは民族舞踊も披露され、お祭り気分を盛り上げていました。

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統制委員会会長のルールデス・ピコさんはこれを機会に外部の人々にもビニサレムのワインの美味しさを知ってもらうだけでなく、マヨルカ島に来たらビーチだけでなく、豊かな歴史と文化を持つ内陸の魅力にも目を向けてほしいと語りました。

現在、この原産地呼称の名前はビニサレム・マヨルカ。マヨルカを付けることによって、少なくとも”あの有名な”マヨルカ島のワイン産地であることはわかってもらえるのです。さらに、賛否両論あるのですが、マヨルカなんて小さな島なのだから、原産地呼称をビニサレムとプラ・デ・バジェスの2つに分けないで、マヨルカに統一してしまえという意見も聞かれました。

ビニサレムのワインの85%は地元消費です。とはいえ、観光客が多いため、地元民が飲んでいるとは限りませんが、輸出は14%。残りはスペイン本土ですが、ごくわずかです。要するに地元のワインなのですが、そこから脱する一歩としての位置づけがこの「ワイン・デイズ・マヨルカ」にはあります。

今年はドイツのワインの産地、ファルツ市長一行が招かれていました。「ワイン・デイズ」のアイデアは、国際ワイン展示会で両ワイン産地が知り合ったことにあったそうです。ドイツは輸出市場の約80%を占めています。

 

原産地呼称ビニサレム・マヨルカ

 ビニサレム・マヨルカは1991年に原産地呼称の認定を受けました。地中海の島なので、フェニキア人やローマ人によってワインが作られていた時代もあり、イスラム教徒に支配された時代を経て、キリスト教徒の手に戻ってからのワインの歴史もあります。フィロキセラの害に遭って以降、ぶどう栽培者が減り、栽培面積は減っていきました。回復し始めたのは20世紀末のことで、以後、現在に至るまで、新しい感覚のつくり手たちも増え、地元の品種を生かしたワインつくりが進んでいます。

 認定品種は、地元の黒品種としてはマント・ネグロ(40%弱)とカリェット(3%)、白品種ではプレンサル・ブラン(約60%)があります。

原産地呼称認定地域はマヨルカ島北部山系の南側を、パルマ市から島の反対側の海岸まで抜ける街道のまん中あたりに位置する、ビニサレム、コンセル、サンタ・エウヘニア、サンタ・マリア・デル・カミ(地元ではサンタ・マリアと省略)、センセリェスの5つの町から成っています。(地図 http://www.binissalemdo.com/comarca
)ボデガは全部で14軒です。

 

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ボデガ訪問記

 57日からボデガを見学しました。パルマのホテルからビニサレムの認定地域に向かう道は、左側に山を見ながらのどかな田園風景の中を走っています。気候も良いし、様々な作物が栽培されていました。ぶどう畑は合間、合間に見えますが、だいたいは街道から少し外れたところにありました。

 

ボデガ・ビニアグアルBodega Viniagual

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 最初に訪れたボデガは、統制委員会の事務所もあるビニサレムの町から少し南東に行ったところにある「ボデガ・ビニアグアル」。オーナーはドイツ人一家です。1968年、見捨てられていたビニアグアル村を買い取り、修復し、1999からぶどうを植え始めました。現在は34haの畑で、地ぶどうのマント・ネグロとプレンサル・ブランの他、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、モスカテルも栽培しています。案内してくれたファミリーのシャルロット・ミラーさんは「ここは住むには本当にいいところです」と言います。ぶどうだけでなくオリーブや各種野菜など、その他の農産物もたくさん栽培しているのだそうです。

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 ワインは白と赤、そしてマント・ネグロ100%のロゼ「ベラン・ロサット」がありました。美しいサーモン・ピンクでフルーティな香りの辛口です。マヨルカのビーチに合いそうなワインです。

 

ジャウメ・デ・プンティロ Jaume de Punti

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 「ジャウメ・デ・プンティロ」は原産地呼称認定地域内の町ではパルマ市から一番近いサンタ・マリアの中央広場にあるボデガです。入口はショップになっていて、ワインの量り売りもしている庶民的なボデガです。オーナーのペレ・カラ・ファト・イ・ビックさんは元原産地呼称会長です。とはいえ、ぶどう畑が似合う、ワインを愛する人柄が伝わってくるような人です。

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 ペレさんとはまず畑へ向かいました。マヨルカはだいたいが平たんな土地で、最高峰は、とんがった先が特徴のプッチ・マジョールの1447mです。山が連なって見える方向が北です。あまり高くないとはいえ、北風からぶどうを守ってくれています。畑の土は赤茶けた色で、石ころがたくさん混じっています。ペレさんはオーガニック栽培を行っていて、黒ぶどう品種としてはマント・ネグロ、カリェット、白はプレンサル・ブランが主で、カベルネ・ソーヴィニヨンを補助的に使っています。

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白ぶどうのプレンサル・ブラン100%の「ダウラット」はラベルからすると明るく楽しいイメージですが、中身はそれだけでなく、しっかりしています。樽発酵後、澱ともに6か月おいてあるため、青リンゴのような香りが感じられるステンレスタンク発酵の若いワインに比べて、ふくらみのある香りと複雑味のある味わいがあります。

 


マシア・バトレ Macià Batle

 

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原産地呼称ビニサレムの2大ボデガのひとつが「マシア・バトレ」です。そのディレクター、ラモン・セルバルス・バトレさんは大の絵画ファンで、そのコレクションがボデガのあらゆるところに飾ってあります。

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マシア・バトレは1856年創設ということで、歴史もあり、2003年にオーナーが変わったことから設備投資がされ、規模が拡大されたため、ボデガを巡っていても、最新の卵型のセメントの発酵槽がある一方、かつての地下のセメントの貯蔵槽が瓶熟庫に使われていたり、いろいろな場面に出合います。

ここのワインは白も、ロゼも、赤もブレンドで、赤にはマント・ネグロ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーを使っています。いずれもモダンで飲みやすいワインです。ラベルには現代画家の作品がふんだんに使われているので、それを見るのも楽しみです。

 

ティアンナ・ネグレ Tianna Negre

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 ビニサレムにある「ティアンナ・ネグレ」はオシャレでモダンなボデガです。樽熟庫もステキです。ここではマント・ネグロやカリェット100%のワインも眠っていました。地元の品種を大切にしたいということで、マント・ネグロやプレンサル・ブランはもちろんのこと、カリェット、そしてジロ・ロスという品種も使っています。畑は48haあり、あと10ha増やしているところで、新しい畑はオーガニックだそうです。

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「ティアンナ・ボッコリス」の白はソーヴィニヨン・ブラン、プレンサル・ブランそしてジロ・ロスを使っています。将来はプレンサル・ブランとジロだけにしたいとのこと。

 

セレール・ラマニャ Celler Ramanyà

 

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サンタ・マリアにある「セレール・ラマニャ」の入口は大邸宅風です。ここはボデガですが、まずはオーナーのスペシャル・コレクションを見学。地域に根差した文化を語る日用品、手仕事の道具などが所狭しと展示してあり、オリーブの木でできた大樽など、ワインつくりに関するものも含め、興味深いものがたくさんありました。

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 ボデガの創設は2003年。自分たちのワインをつくろうという若者たちが集まって始めただけに、こだわりがあり、地元の品種をしっかり研究しています。ボデガの入口の壁にはバレアレス諸島の地元品種のポスターがはってありました。

 

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マント・ネグロ100%のロゼのスパークリングワイン「Goig(ゴーチと発音する)」もつくっています。瓶内二次発酵製法で、動瓶も滓抜きも手で行うそうです。これはフレッシュで辛口。「88」という名前の赤ワインはマント・ネグロ中心でメルロー、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨンのブレンドです。しっかりした複雑味のある味わいです。ヴィンテージ2010年まではカベルネ・ソーヴィニヨンも使っていたのですが、これからは使わないそうです。試しながら少しずつ改良を重ねていっている、若いボデガです。

 

ワインのイベントは大賑わい

 

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「ワイン・デイズ・マヨルカ」に関連して、58日には首都パルマで「Nit del Viニ・デル・ヴィ」つまりワイン・ナイトという名のワイン・フェアが修道院の庭で開催され、原産地呼称ビニサレムだけでなく、マヨルカ島全島のボデガが集結して、町の人々にワインを振る舞いました。若者も多く、真剣に試飲をしていました。

 前出の「ワイン・デイズ・フェア Feria Wine Days」には原産地呼称ビニサレムの5都市の市長さんが集まり、ボデガが出展しているブースを周って、挨拶を交わしながらワインを味わっていました。

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 ビニサレム最大手の一つで原産地呼称創設メンバーの一つでもある、1931年創業の「ボデガス・ホセ・ルイス・フェレールBodegas José Luis Ferrer」のブースではこれからボデガを背負っていく次世代、ホセ・ロセス・ランブルネ君が気軽にワインを振る舞っている姿が、マヨルカのワインの未来のような明るい印象でした。

 

 まだ、あまり日本に入ってきていないビニサレムのワインですが、見かけたらぜひ手に取ってみてください。赤ワインならマント・ネグロ、白ワインならプレンサル・ブランをチェックして、試してみてください。

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