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シェリー・アカデミー・ツアー2018 Sherry Academy Tour 2018

毎年シェリー委員会がコーディネートしている「シェリー・アカデミー・ツアー」が今年も1月に実施されました。

今年はイベリア航空の直行便を往復使ったため、1月15日発、22日帰国と、日程が長くなり、樽メーカーとフェニキアの遺跡の訪問も含め、充実度がアップしました。

1月16日(火)

・シェリー原産地呼称統制委員会にて、訪問前の基礎知識の確認としての講義を受けます。

 

 

 

 

・まずは、ティオ・ペペTio Pepeのメーカー、「ゴンサレス・ビアスGonzález Byass」社の畑「ラ・ビニャ・カナリエラLa Viña Canariera」を見学。畑の位置を確認したり、土壌の違いを比べたり、栽培の基礎知識をいただきました。町に戻って、カテドラルの隣、アルカーサルの前にあるボデガへ。

チーフ・ブレンダーのアントニオ・フローレスAntonio Floresさんによる樽からのワインの試飲はゴージャスです。ベネンシアドールの本来の姿が見られたのも収穫。同社の製品の試飲の後、特別のダイニング・コーナーでマリアージュのランチをいただきました。最後は豊富な品ぞろえのショップでお買い物。素晴らしいプログラムでした。

 

 

 

 

 

 

 

・午後はヘレスの鉄道の駅近くにある「アルバロ・ドメックÁlvaro Domecq」社を訪問。もともとアルマセニスタだったボデガは小さめですが、雰囲気があります。タペストリーの掛かったクラシックな試飲スペースで、あるボトル全部を試飲させていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

1月17日(水)

・この日はシェリー原産地呼称統制委員会で会長、ベルトラン・ドメックさんの解説で、統制委員会のジェネリック・ワインを使った試飲。引き続き、地元各メディアの取材を受けました。

・次は樽工場訪問です。「アントニオ・パエス・ロバトAntonio Páez Lobato」というメーカーですが、ワインの「ボデガス・パエス・モリーリャ Bodegas Páez Morilla」もパエス家の同族会社です。樽工場の生産部長はイサアク・パエス・グティエレスさん。輸出担当は従妹のエスペランサ・ラミレス・パエスさんで、彼女はボデガも担当しています。

このボデガは真ん中に大きく25と書かれた黄色っぽいラベルのシェリー・ヴィネガーや、ヘレスより内陸のアルコス・デ・ラ・フロンテラで造る「ティエラ・ブランカTierra Blanca」という、パロミノとリースリングを使った軽やかな白ワインのメーカーとして知られています。

樽材を乾燥させ、サイズに合わせてカットし、組み立て、湿らせ、火にかけて曲げ、形を作っていく全工程を見学しました。職人さんの技が光っていました。この樽工場で造られた樽はこのボデガでシーズニングされてウィスキー・メーカーに引き取られていきます。

・次はヘレス市内の「ボデガス・ルスタウBodegas Lustau」です。ボデガの前の通りのオレンジの並木道は、丁度、市が行う摘み取り作業のまっただ中でした。摘まれた実はママレードに使われるそうです。

19世紀にたてられたボデガは、どれも高い天井を真っ白な柱が支えるカテドラルに例えられるスタイルで、整然とした凛とした空気が漂っています。特に、他にはないといわれる丸い石柱を使った「ラ・エンペラトリスLa Emperatríz(皇后)」という名のボデガはステンドグラスも美しく、エレガントです。ルスタウはヘレス・デ・ラ・フロンテラだけでなく、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアとサンルーカル・デ・バラメダにもボデガを持つ唯一のボデガでもあり、その3都市の熟成条件の違いが感じられる生物学的熟成のワインの試飲はここの定番です。その他、辛口・甘口タイプ、アルマセニスタ、ブランデー、ベルモット等々、様々な試飲をさせていただきました。

ランチはルスタウのショップ兼ラウンジでタパスとシェリー各種を合わせていただきました。いつもおしゃれなボデガです。

 

・午後は、ルスタウのすぐ隣にある「エミリオ・イダルゴEmilio Hidalgo」です。以前は何の看板もなく、ひそかに緑の扉が閉じていたのですが、今や大きくボデガの名前が掲げられ、ランプにも灯が入っています。ここはまさにファミリー経営。兄弟や従兄弟がそれぞれ役目を担っています。訪問が夜になってしまったので、手半分闇の中を探り状態で歩くのも、なかなかない体験です。小規模なので観光コースやショップとは縁遠い雰囲気ですが、心温まる居心地のいいボデガです。ファミリーが代々熟成してきたワインも格別です。

 

 

 

 

 

1月18日(木)

・この日はマンサニーリャの熟成地、サンルーカル・デ・バラメダへ向かいます。まずは、ヘレスとサンルーカルの間にある「ボデガス・イダルゴ=ラ・ヒターナBodegas Hidalgo – La Gitana」の畑「エル・クアドラドEl Cuadrado」に寄って、剪定を見せていただきます。1月は剪定時期なので、他の畑でも剪定している人を見かけます。

ここでは3名が慣れた手つきで鋏を使って不要な枝を切り落としていました。バラ・イ・プルガルというヘレスの伝統的な剪定法で、前年実をならせた枝は切り落として、翌年休ませ、前年休んだ枝は、翌年伸ばして実をつけます。一年交代で片腕ずつ使うので、樹の寿命が長いそうです。最近は機械収穫が増えているので、ダブル・コルドンという、両腕を広げた形にする剪定が増えています。

「ラ・ヒターナ」の畑の名物(?)は朝ごはん。畑仕事の合間に休憩して、チョリソやチーズとともにアモンティリャードを飲みます。冬の真っ青な空のもとで飲むアモンティリャードは格別です。

 

・サンルーカルは海辺の町らしく、雰囲気が明るく穏やかです。「ラ・ヒターナ」のボデガでは、常に「養老院」と称する中地下のボデガで、一番熟成期間の長いアモンティリャードやオロロソから試飲が始まります。古いワインをたっぷりいただいた後、マンサニーリャ・パサダ、そして最後がマンサニーリャです。シャッキリしたところで、お昼を食べにグアダルキビール川が大西洋に注ぐ河口で、世界自然遺産のドニャーナ国立公園の前にあるビーチ「バホ・デ・ギア」のレストランへ。シーフードとマンサニーリャのペアリングは最高です。

 

・次の訪問は「ボデガス・ジュステBodegas Yuste」。オーナーのフランシスコ・ジュステさんがボデガを入手し始めたのは1989年のことです。現在は「ミラフローレスMiraflores」、「サンタ・アナSanta Ana」、「ロス・アンヘレスLos Ángeles」の3つのボデガを所有。最近、「エレデロス・デ・アルグエソHerederos de Argüeso」もジュステの傘下に入りました。今回はメインのボデガで、少し郊外にある「ミラフローレス」とサンルーカルの町中にある「アルグエソ」を見学。サンルーカルのワインの伝統を守りながら、次の世代に継承していこうとするオーナーの心意気が感じられるボデガでした。夕食は「ジュステ」のワインが飲める町中のバルで、エビの塩ゆでやイワシのフライなどご当地メニューを満喫しました。

 

 

 

1月19日(金)

・プログラム最後の日はシェリーの歴史を語るにあたって外せないフェニキア人の遺跡、「ドーニャ・ブランカの遺跡Yacimiento de Doña Blanca」を見学に行きました。敷地内にブランカという女性が幽閉されていたといわれる塔があるため、こう呼ばれていますが、その女性が亡くなってから建設された塔なので、意味不明とのこと。遺跡はヘレスとエル・プエルトの間にある小高い丘にあります。紀元前3~4世紀に造られたブドウ踏み用の石のラガールが見られます。ら側には紀元前8世紀の住居跡も発掘されています。

・ここから第3のシェリー熟成地、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアにある「ボデガス・グティエレス・コロシアBodegas Gutiérrez Colosía」へ。グアダレーテ側のすぐ畔にあり、地下からの湿気が強く、常にボデガの中の空気はしっとりしています。ここもファミリー企業で、オーナーのフアン・カルロスさんとカルメンさんご夫婦と二人の娘で切り盛りしていますが、そのパッションは半端ではありません。言葉の一つ一つから溢れるマイ・ワインへの愛がひしひし伝わるボデガです。

お昼は娘のカルメンさんがプロデュースする、ポップなレストランでフレッシュなシーフードをおしゃれにアレンジした料理と、コロシアのワインのマリアージュを楽しみました。

・夜はヘレスに戻って、「ヒメネス・スピノラXiménez-Spínola」を訪問。ヘレス地域では唯一、ペドロ・ヒメネス(PX)だけでシェリーを造っているボデガです。原則、ヘレスにある自社畑で栽培したPXしか使いません。極甘口シェリーのPXだけでなく、PXだけを使った白ワインやブランデーも造っています。いずれも高いクオリティーを目指した製品なので少量生産です。

PXの生産をほぼモンティーリャ・モリーレスに頼ってきたヘレスでは、最近、PXを独自に栽培してワインを造ろうという意欲のあるボデガが出てきていて、将来性が感じられます。

来年も「シェリー・アカデミー・ツアー」を実施する予定ですので、ぜひご参加ください。

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