5月26日(日)から28日(火)までの3日間、シェリーの里、ヘレス・デ・ラ・フロンテラJerez de la Fronteraの歴史的建造物、アルカサルAlcázarを会場として、今年で第12回を迎える“ノーブルなワイン”のフェア、VINOBLEが開催されました。酒精強化ワインと甘口ワインにテーマを絞ったワイン・フェアは世界でもユニークな存在です。
会場のアルカサルは城壁に囲まれた要塞で、その建設は12世紀、ヘレスの町がアラブの支配下にあり、シェリシュというシェリーの語源と言われる名前で呼ばれていた時代に始まりました。レコンキスタ(国土回復運動)により支配権がキリスト教徒の手に戻った後、15世紀には塔が、18世紀には邸宅Villavicencioとオリーブ轢き場Molino de aceiteが加えられています。これらの建物とパティオをフルに使って各社のブースとテイスティング・セミナー会場3つが設定されていました。
メインの会場といえる邸宅で、2階に例年大きなスペースを占めているのが、地元のシェリー&マンサニーリャ原産地呼称統制委員会です。タイプ別に分類してあるコーナーで各社の製品が一度に試飲できる機会はなかなかありません。
同じ階には「ゴンサレス・ビアスGonzález Byass」やハーベイHarveysのメーカー「フンダドールFundador」といった大手と共に、小規模で高品質の製品を造る「ファウスティノ・ゴンサレスFaustino González」や「ボデガス・エスピノサ・デ・ロス・モンテロスBodegas Espinosa de los Monteros」といったシェリーのメーカーが並び、さらに同じスペースに高品質スパークリングワインのEU認定集団商標Marca Colectiva de la Unión EuropeaコルピンナットCorpinnatのリーダー的存在の「グラモナGramona」が出展していました。グラモナの場合ランシオGramona Batlle Solera Inicial 1910 – Vi Ranci以外、主要製品である辛口スパーリングはVINOBLEの趣旨に添わないのですが、大目に見られていて、当然ながら大人気でした。
別のサロンではマンサニーリャの最大手「バルバディーリョBarbadillo」や新たにDO付きシェリーとして販売できる都市として認定されたチクラナChiclanaのボデガが集まって出展したブースもありました。
1階に降りると、シェリー関係では主要ブランド、バルデスピノValdespino、レアル・テソロReal Tesoro、マンサニーリャのラ・ギータLa Guitaの3つを持つ「ホセ・エステベスJosé Estevez」と、ペドロ・ヒメネス種のブドウに特化した「ヒメネス・スピノラXiménez Spínola」がそれぞれ1室を占めていました。サンルーカルのメーカー各社のマンサニーリャManzanillaを集めたブースもありました。
アンダルシアのワイン産地では、シェリーの産地の西にある「DOコンダド・デ・ウエルバCondado de Huelva」と内陸のコルドバ県にある「DOモンティーリャ・モリーレスMontilla Moriles」が出展。モンティーリャでは長年オーガニックでワインを造り続けてきた「ロブレスRobles」が新製品を出展。前回のVINOBLEで発見した「ボデガス・イングレサBodegas Inglesa」とも再会しました。後日マドリッドのワインバーでこのイングレサのワインをグラスで頼みました。レシートを見たら1杯17€で驚愕!けれども確かにおいしいです。
外に出るとアンダルシアの灼熱の太陽。パティオのブースはテント張りなので、暑さが身に染み、冷えたフィノが一層美味しく感じられます。「ルスタウLustau」ではヘレス、エル・プエルト、サンルーカルの3都市で熟成するフィノ・タイプのワインのノン・フィルタータイプ、エン・ラマのシリーズ3en Ramaの3本を、「フェルナンド・デ・カスティーリャFernando de Castilla」ではフィノ・エン・ラマFino en Rama | Saca Primavera 2024を。これはフロール(産膜酵母)の状態が良い春にボトリングしたものです。
パティオで人気だったのは前回、前々回に続いて出展したアルバリサ土壌に根差したワイン造りに拘る小規模なワイナリーのグループ、「テリトリオ・アルバリサTerritorio Albariza」です。「ルイス・ペレスLuis Pérez」のウィリー・ペレスWilly Pérezと「コタ45 Cota45」のラミロ・イバニェスRamiro Ibáñezが代表して、シェリーの産地だけでなく、外部にも情報を発信しています。他には「カリェフエラCallejuela」、「フォルロングForlong」、「ムチャダ・レクラパルトMuchada Leclapart」、「プリミティボ・コリャンテスPrimitivo Collantes」そして前出のウィリーとラミロの共同プロジェクト、「デ・ラ・リバM. Ant De la Riva」が参加しています。シェリーとマンサニーリャの他、スティルワインも含まれ、それにはフロールが発生するものとしないものがあります。
このパティオにはエル・プエルトにある、街道筋で有名な真っ黒な闘牛の看板の主、「オスボルネOsborne」も出展。素晴らしい長期熟成シェリーを試飲に供していました。
もう一つのパティオには日本の酒が出展。今年は特別なテーマとして日本酒が取り上げられ、スペインに日本酒を輸入しているパブロ・アロマ―ルPablo Alomarが紹介するテイスティング・セミナーも行われ、駐スペイン日本大使の中前隆博閣下がご来場になりました。
毎回注目されるのはテイスティング・セミナーです。今年も3か所を会場に数々のテーマで実施されました。
MWのサラ・ジェイン・エヴァンスSara Jane Evansはギリシャのワインを、ペドロ・バリェステロスPedro Ballesterosは2日目にDOマラガとDOアリカンテのモスカテルを、3日目にフロールの膜をテーマにプレゼンテーションしました。
アンダルシアの3つの原産地呼称、モンティーリャ・モリーレス、マラガ+シエラス・デ・マラガ、コンダド・デ・ウエルバが共同主催したパゴ(畑の区画)をテーマにしたテイスティングも、なかなかない機会で、興味深いものでした。
地元のシェリーやアンダルシアのワインだけでなく、カナリア諸島のワイン、フランス各地の伝統的なワイン、ニューワールドのワイン、ドイツのワインなど、興味深いテーマがたくさんありました。プログラムは以下をご参照ください。(スペイン語です)https://www.vinoble.org/blog/programa-de-catas-vinoble-2024
シェリー原産地呼称統制委員会による「シェリーを飲む、食べる、愛するBeber, Comer, Amar Jerez」の発表、前出ラミロ・イバニェスとウィリー・ペレスによる「アルバリサ/新しいルネッサンスALBARIZA Un nuevo renacimiento https://albarizalibro.com/」の発表もありました。
今年は例年以上に暑かったVINOBLEでした。これから乾季に入るスペイン。ブドウ畑に水分が足りていることを祈るばかりです。