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FENAVIN 2023-1

2023年5月9日~11日、スペイン、カスティーリャ・ラ・マンチャ州の真ん中にあるシウダド・レアル市で、スペイン国産ワイン展、FENAVINが、昨年に続き、2年連続で開催されました。FENAVINはこれまで隔年に開催されてきていましたが、新型コロナウイルスのパンデミアのため、2021年に開催されるはずだった前回が、1年遅れて、昨年開催されたのを挽回すべく実施されたものです。

Food & Wine from Spainによると、1921社が出展し、19,000名以上のバイヤーが参加。そのうち4000名が、100か国以上にのぼる海外からの来場者だったとのことです。さらに、117,000名以上の来場者があり、106,000,000ユーロ相当の519,000に及ぶ商談が行われたとのことです。

ワインフェアはいつもたくさんの出会いがあります。

会場入り口に構えていたのはカナリア諸島。7つの島(ランサローテ島の北の端の先にある小さなラ・グラシオサ島を入れると8島)のすべてでワインが造られていて、DOP保護原産地呼称はテネリフェ島に5つあり、その他ランサローテ、グラン・カナリア、ラ・パルマ、ラ・ゴメラ、エル・イエロの各島がそれぞれ原産地呼称を持っています。フエルテベントゥーラ島にDOPはありませんが、ワインは造られていて、カナリア諸島全域をカバーするDOPイスラス・カナリアス(スペインの伝統的なクラスではVCというDO認定手前の段階)に含まれています。

まず、テネリフェ島のDOPバーリェ・デ・ラ・オロタバValle de la Orotavaの「タフリアステTafuriaste」https://www.bodegatafuriaste.com/。オーナーで醸造家のマヌエル・ルイス・エルナンデスManuel Luis Hernéndezさんはリスタン・ブランコListan Blancoの白やリスタン・ネグロListan Negroの赤といったカナリア諸島の定番と言っていい地場品種のヤング・ワインの他、「オチョ・イスラスOcho Islas Tinto Roble」というリスタン・ネグロ90%、カステリャーナ Castellana 7%、ティンティーリャ Tintilla 3%という、まさにカナリアン・ブレンドで、樽熟2か月の赤ワインや「プルネットPrunet Tinto Esencia」というリスタン・ネグロ80%とティンティーリャ20%、フレンチオーク樽熟成9か月という上級編まで数種のワインを造っていますが、どれも火山島らしいミネラル感を残しつつも洗練された風味を持っていました。

やはりテネリフェ島にあるDOPタコロンテ・アセンテホTacoronte-Asentejoの「ワイナリー・バーグマン・テネリフェWinery Burgmann Tenerife」https://burgmannwinery.com/は、2014年にカナダからテネリフェに移り住んだ醸造家、マーク・ロシュフォールMarc Rochefortと共に2020年に立ち上げたワイナリーです。この地域は赤ワインが得意でしたが、今は様々なタイプのワインが造られています。ここも白、ロゼ、赤がありました。

テネリフェ島のすぐ西隣の、世界自然遺産認定の島、ゴメラ島にあるDOPゴメラ。ここではフォラステラForasteraという、珍しい品種のワインを試しました。「ボデガ・モントロBodega Montoro」 https://www.facebook.com/profile.php?id=100057555005111のオーナー、アルメニア・メンドーサ・メンデスArmenia Mendoza Méndezさんが、満面の笑顔で薦めてくれたワインはどれもおいしいのですが、やはり独特の植物的な風味と酸味を持つフォラステラが面白く、「ラデラ・デ・モントロLadera de Montoro」はしっかり背筋の通ったクリーンなイメージのワインでした。

DOPウティエル・レケーナは今回も、統制委員会が全ボデガのワインを1本ずつ出展し、自由試飲できるスタイルにしたブースを構え、その横に、希望するボデガが独自のブースを出展していました。テーマは主要地場品種のボバル。ボバルの赤ワインはどのボデガの製品も安定したおいしさですが、ロゼも料理に合わせやすく、和食にも向いているので、ぜひもっと輸入していただけるといいと思います。

今回も「ベラ・デ・エステナスのVera de Estenas https://veradeestenas.es/」はオーナー醸造家フェリックス・マルティネスFélix Martínez Rodaさんが笑顔で対応。現在はDOPのなかでもスペイン式原産地呼称分類では最高の単一ぶどう畑限定高級ワイン=ビノ・デ・パゴVino de Pagoの認定を受けた「パゴ・ベラ・デ・エステナスPago Vera de Estenas」でもワインを造っています。その「ベラ・デ・エステナス・レセルバVera de Estenas Reserva 2018」をいただきました。熟成タイプのボバルはエレガントで美味。また、この地域で初めてボバルで長期熟成を目指して造られたワイン「カサ・ドン・アンヘルCasa Don Ángel」のビンテージ2020もいただきましたが、ボバル100%で、15か月樽熟。まだまだ瓶熟で良くなる、将来が楽しみなワインです。

ウティエル・レケーナでは初めて「ボデガス・ヒメネス・ビラBodegas Jiménez Vila https://www.jimenezvila.es/」のホルヘ・ヒメネス・ビラさんともお知り合いになりました。50年以上の樹齢の畑を持ち、黒品種のボバルと白品種のタルダナに力を入れていますが、ソービニョン・ブランとシラーも栽培しています。モダンなデザインのラベルが素敵なワインで、樽発酵したタルダナ60%とステンレスタンク発酵のソービニョン・ブラン40%のブレンドタイプの白ワインもシャキッと筋の通ったワインでした。

同じバレンシア州のDOPアリカンテAlicanteでは「ペペ・メンドーサPepe Mendoza」に立ち寄りました。「Casa Agrícola」https://casaagricola.es/ つまり農家と自称しています。満面の笑顔でワインを説明してくれたクリスティアン・カスタニェイラCristian Castañeyraさんは名刺にはエノツーリスムの責任者トブランド・アンバサダーと書いてありましたが、ウェブサイトを見ると、どうも彼がオーナー醸造家のようです。つまり家族経営のボデガで、一人で何役も兼ねているようです。

このボデガは1900年に、アラブ起源のリウラウRiu-Rauというブドウを干すために作られた建物があったところに建てられたそうです。畑は12ha。地場品種のジロとモスカテル・ロマノに力を入れています。

試したワインは、最初の「ペペ・メンドーサ」白がモスカテルMoscatel 40%、マカベオMacabeo 40%、メルセゲラMerseguera 20%。マカベオとメルセゲラは標高の高い畑で、モスカテルは海に近い畑で栽培されたもの。次の白は「プレサPureza」=純粋、純潔といった意味の名前が付いている通り、モスカテル100%ですが、かつてこの地域でブリサッツBrisatsと呼ばれていたワインを思いださせる造り方をしたワインで、今風に言うならオレンジワインです。レバンテ地方(スペインの地中海沿岸地域で特にバレンシアとムルシア)ではブランコ・ブリサドblancos brisados(直訳では、そよ風に吹かれたワイン)と言うようです。

赤の1本目は「ペペ・メンドーサ」、モナストレルMonastrell 70%、ジロ Giró 25%、アリカンテ・ブシェ Alicante Bouschet 5%。まさに地中海的ブレンドです。2本目は「ジロ・アバルゲスGiró de Abargues」ジロGiró 100 %。このジロという品種はアリカンテのマリーナ・アルタ地区の他、マヨルカ島、サルディーニャ島で栽培されているとのこと。最後は赤の「エル・ベネノEl Veneno」。毒という意味です。ただ、ワインが毒なわけではなく、叔父のあだ名で、強面の怖い人だったようですが、素晴らしい畑を残してくれ、それがこのワインに使われているモナストレルの畑です。どれも素晴らしく洗練された良いワインでした。

DOPアリカンテは、昨年もFENAVINで試飲させていただきましたが、かつて知っていたアリカンテとは全く違っています。ぜひ、改めて訪問したい地域です。

DOPウクレスはマドリッドのすぐお隣の小さな産地ですが、首都圏にあるといっていい条件からか、モダンでおしゃれな飲みやすいワインがあります。「ボデガス・フォンタナBodegas Fontana https://www.bodegasfontana.com/empresa.aspx」は500haの自社畑のうち350haはテンプラニーリョ。白品種はソービニョン・ブラン、ヘルデホ、モスカテル・デ・グラノ・メヌド合わせて50ha。残りがフランス品種の黒ブドウです。ウクレスの製品は「エセンシア・デ・フォンタナ Esencia de Fontana」のブランドですが、ビノ・デ・ラ・ティラ・デ・カスティーリャ(IGP)で出している「ケルクスQuercus」というテンプラニーリョ100%で15か月樽熟の赤ワインが品質的にも一番ではないかと思っています。

たまたま通りかかったら、呼び止められて試飲させていただくことになったのがDOPビエルソBierzo http://www.crdobierzo.es/es/ の「ボデガス・ペイケBodegas Peique  https://www.bodegaspeique.com/」のワインです。ビエルソには久しく行っていないので、興味がありました。位置的にはスペイン北西部、カスティーリャ・イ・レオン州の西の端にあり、ガリシア州と接しています。主要ブドウ品種は黒ブドウのメンシアMencía。他にはガルナチャ・ティントレラGarnacha tintorera、ゴデーリョGodello、ドニャ・ブランカDoña blanca、パロミノPalominoが認定されています。フィロキセラ以後に植えられたパロミノ以外、いずれもこの地域の地場品種です。そしてこれらは、地続きなので当然ですが、隣のガリシア州と共有しています。

「ペイケ」は1912年創業の家族経営のボデガです。オーナーのルイス・デ・プリエゴLuisde Priegoさんと、2019年に始めた単一区画=パラヘParageのワインのシリーズを試しました。「マタ・ロス・パルドスMata los Pardos」、「コバ・デ・ラ・ラポサCova de la Raposa」、「エル・ラポラオEl Rapolao」。かつてビエルソのメンシアが大変注目され、著名な醸造家がこぞってワインを造り始めたころのがっちりしたワインとは大分イメージが変わっていました。いずれもエレガントで柔らかさのある美味しいワインでした。

次はガリシア州です。DOPリベイロRibeiroのボデガ、「カサル・デ・アルマンCasal de Armán」と「エドゥアルド・ペニャEduardo Peña」を訪問。いずれもかなり前に訪問したところです。「カサル・デ・アルマン」は代変わりしていますが、「エドゥアルド・ペニャ https://www.bodegaeduardopenha.es/nw/ 」はエドゥアルドさんが前と全く同じと言っていいくらい変わらず、笑顔で迎えてくれました。彼のボデガは一見湖の前にあるようですが、これはガリシア州を通って、ポルトガルとの国境を流れ、大西洋にそそぐミーニョ川の一部で、ここだけ湖状態に幅が広くなっています。ボデガを囲むようにしてある10haのブドウ畑は砂質、粘板岩質、石ころの土壌。栽培品種は地場品種だけで、白ブドウがトレイシャドゥーラTreixadura、アルバリーニョAlbariño、ゴデーリョGodello、ラドLado、ロウレイラLoureira。黒ブドウがカイニョCaiño、ソウソンSousón、ブランセリャオBrancellao。この白品種を全部使って樽発酵で造ったのが「エドゥアルド・ペニャ」。名前の通り、まさに製作者そのままのようなワインで、安心して飲めます。「マリア・アンドレア」はトレイシャドゥーラ、ロウレイラ、アルバリーニョのブレンド。「サラ・ペニャ」はソウソン、カイニョ、ブランセリャオの赤。「ラ・ビスタLa Vista」は粒よりのアルバリーニョとトレイシャドゥーラで造った上級クラス。どれも、ブドウを大切にしたしっかりした造りのワインで、リベイロの質を感じさせてくれます。

ここで地中海の島、マヨルカに飛びます。DOPビニサレムBinissalemの「ホセ・フェレールJosé L. Ferrer https://www.vinosferrer.com/en/home/ 」です。1931年創業で現在4代目が継いでいます。2016年にはその4代目が「ベリタスVeritas」という最新設備の整ったボデガを作っています。今回試したのは「フェレレットFerreret」というブランドです。マヨルカ島に生息するカエルの絵がラベルになった、地場品種の単一品種シリーズです。「ジロ・ロスGiró Ros」の白はフレンチオークの300ℓ樽で発酵し、樽熟3か月。「モルMoll」も白。「マントネグロMantonegro」は500ℓ樽で造った赤です。他に「カリェットCallet」と「ゴルゴリャサGorgollasa」があるようで、活気があって面白そうです。

締めくくりは「コルピナットCorpinnat https://www.corpinnat.com/ 」です。コルピンナットとは、県外にもサブゾーンを持つスパークリング・ワインの原産地呼称CAVAとは一線を画し、19世紀、伝統的製法のスパークリング・ワインの生産を始め、製品化に至らせたカタルーニャ州のペネデス県内の地域を表した名称です。これは2017年9月1日、カタルーニャ政府法務局Departamento de Justicia de la Generalitat de Catalunyaによって承認された「コルピンナット生産栽培者協会La Associació d’Elaboradors i Viticultors Corpinnat (AVEC)」の持つ商標になっていて、EUレベルでは集合ブランドmarca colectivaとして認定されています。創設時の参画ボデガはグラモナGramona、リョパールLlopart、ナダルNadal、レカレドRecaredo、サバテ・イ・コカSabaté i Coca、トレリョTorellóの6社でしたが、現在は、カン・フェイシャスCan Feixes、ジュリア・ベルネJúlia Bernet、マス・カンディMas Candí、カン・デスクレグCan Descregut、パルダスPardasも加わって11社になっています。

高品質のスパークリングだけの生産を旨とし、規則は厳しく、オーガニック栽培の自社畑のブドウを手摘みし、自社の設備で醸造し、熟成は18か月以上などが設定されています。

今回はリョパール、サバテ・イ・コカ、ナダルを試飲。リョパールは14世紀から、ナダルは1510年からと、どちらも長いワイン造りの歴史を持った家系だけに、製品も安定しています。サバテ・イ・コカはまだ訪問したことがないのですが、ワインフェアではいつも熱心にワインを説明してくれます。グラサバテ・イ・コカモナとレカレドが参加していなかったのが寂しかったです。

FENAVIN 2023-2はアンダルシア特集です。お楽しみに。

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