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マス・ドイシュMAS DOIX





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良く晴れた4月の朝、車でバルセロナを出発。プリオラトに向かいました。街を抜けると、タラゴナ方面の道の左右はペネデスのワイン産地で、ぶどう畑の緑のみずみずしさが、目に沁みます。

訪問するのはプリオラトにあるのなかでも北部に位置するポボレダ村にある「マス・ドイシュ」というボデガです。


プリオラト
Priorato
(もしくはカタルーニャ語でPriorat)は1954年に原産地呼称Denominación de
Origen = D.O.
に認定されていましたが、2009年、さらに上のクラスである特選原産地呼称Denominación de Origen Calificada = D.O.
Ca
Denominació
d’Origen Qualificada = D.O.Q.
)に認定されています。

位置的にはカタルーニャ州バルセロナ県の南西に接するタラゴナ県の中央北部にあります。直線距離としては海からそう遠くはないですが、はっきり言って”山奥”です。モンサン山系のもと、シウラナ川が流れる渓谷で、リコレーリャ Llicorella Llicorelles)という粘板岩土壌が特徴です。畑は急斜面に作られていて、一般に、階段式になっている場合は垣根仕立て、斜面に植えられている場合は株仕立てになっています。

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「マス・ドイシュ」では、カリニェーナとガルナチャが植えられた古い畑に行きました。道を作るに当たって削られた崖はリコレーリャの斜めの地層が露わになっています。畑の中も、リコレーリャの岩盤がそのまま表れているところがあったり、わずかに降る雨の通りをよくするためにこの岩盤を砕いた部分があったり。フィロキセラで壊滅したぶどう畑の復活を放棄して都会に出て行った人々の気持ちがわからなくはない、非情な土地です。けれどもこれがプリオラトのワインの個性を生み出すもとでもあるのです。

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「マス・ドイシュ」はドイシュ家とリャゴステラ家が1998年に創設したボデガですが、彼らは1850年からワイン造りをしてきたファミリーの5代目に当たります。フィロキセラの害によって停滞しましたが、1902年、あらためて畑を作り直し、現在に至っています。その時に植えられたカリニェーナ100%で造られた「1902」というワインがあり、2009年がファースト・ヴィンテージでした。

畑を仕切っているのはマイテ・ドイシュさん。彼女は接ぎ木の名人です。ここではすでに接木された苗を買うのではなく、台木を植えて育て、それに自分の畑のぶどうの枝を接いでいます。ワイン造りを担うのは娘のサンドラ・ドイシュさんです。彼女の父親とリャゴステラ家の兄弟がいとこ同士という間柄でボデガを運営しているまさにファミリー企業。ボデガの名前がドイシュなのは、畑を維持してきたファミリーがドイシュ家だったため、畑に敬意を表してのことだそうです。まさに「ワインは畑から生まれる」のです。

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試飲したワインは5本。ポボレダ村はプリオラトの中でも北部に位置し、標高も高いので、クールなワインになります。

Les Crestes 2014  (ガルナチャ 80%、カリニェーナ10%、シラー10%)は鶏のトサカの意味。フランボワーズのような香りで、ラベルのように、明るいムードで、すらっと飲みやすいタイプです。

Salanques 2010(ガルナチャ65%、カリニェーナ25% 、シラー10 %)は、7090年のガルナチャやカリニェーナを使った、樽熟14カ月のものです。 スパイシーさのある香りで、しっかりした酸やタンニン、これからの熟成が待たれます。一方Salanques 2006年は、主要2品種の残りの10%にはシラーだけでなくカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローも入っています。大変バランスの良い、デリケートさや柔らかさのあるワインです。

Doix 2012 (カリニェーナ55%、ガルナチャ45%)は、80105年のカリニェーナを使用しています。このボデガの名前を冠したワインだけあって、熟した黒いベリーの感じられる複雑な香りや、しっかりした骨格を包む豊かさや繊細さのあるプリオラトです。 2008年は、カリニェーナ50%、ガルナチャ48%にメルローが 2%加わっています。スパイシーな香り、きめ細かな口当たり、芯のしっかりしたバランスの良いエレガントなワインです。

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お昼は、第5番目のDOIX 2008を持ちこませていただいて、ポボレダ村のレストラン「ブロッツ」でモダンなカタルーニャ料理をいただきました。

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