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CVNE リオハの歴史を伝えるボデガ

「CVNE=Compañía Vinícola del Norte de España=スペイン北部のワイン会社」という名前のボデガ。通称「クネ」。

CVNE

スペインを代表する赤ワインの産地、特選原産地呼称リオハに3つあるザブゾーン;リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・バハのうち、最もボデガの数も生産量も多いリオハ・アルタのなかでも、古いボデガが最も集中している町アロHaroの一角にある「エル・バリオ・デ・ラ・エスタシオンEl Barrio de la Estación=駅地区」。ここにはスペイン・ワインの歴史が語れるクラスのボデガがそろっています。

創設年順に

・1877 ロペス・デ・エレディア・ビニャ・トンドニアBodegas López de Heredia Viña Tondonia

・1879 クネCVNE.

・1886 ボデガス・ゴメス・クルサドBodegas Gómez Cruzado.

・1890 ボデガス・ラ・リオハ・アルタBodegas La Rioja Alta, S.A.

・1901 ボデガス・ビルバイナスBodegas Bilbaínas.

現在は1970年にアロの町中から移ってきた、1932年創業のボデガス・ムガBodegas Mugaと、1987年に新しくできたボデガス・ロダBodegas Rodaもあります。

リオハはその他の多くのスペインのワイン産地と同じく、ローマの支配下で盛んにワインが造られ、さらにキリスト教の隆盛とともに生産が盛んになっていきました。ただ、リオハはその後、他の地域とは異なった経験をします。

19世紀、アロの町に鉄道が引かれたことと、オイディウムとフィロキセラがフランスのブドウ畑を壊滅させたことによってフランスでの膨大なワイン需要が発生したことから、多くのフランス人がこの地にやってきたのです。彼らはフランス人好みのワインを造り、鉄道でフランスに送りこんでいました。こうして1900年代初めまでに形成されたのが「駅地区」です。当時は各ボデガに樽を列車に積み込むための引き込み線があったそうです。

フランスのブドウ畑はフィロキセラの害から立ち直り、フランス人たちは去りましたが、この地には彼らが持ち込んだワイン造りの手法が残ったのでした。

今回訪問したCVNEは「駅地区」でも2番目に古いボデガです。90年代に一度、2000年代に一度訪れたことがあるCVNE。その中庭には創業当時からあるワインの熟成庫が今も変わらずどっしりと構えていました。が今回、扉を開けると中に樽はなく、もとの建物を上手に生かした、おしゃれなショップとオフィスになっていました。

 

Bodega de CVNE

CVNEは1879年、ライムンドとエウセビオのレアル・デ・アスアRaimundo y Eusebio Real de Asúa兄弟によって創設されました。そのワインはブリュッセルやパリのコンクールで数々の賞を得るなど大成功をおさめ、1890年から1909年にかけて、エッフェル塔を造った建築家エッフェルのデザインで、収納スペースに柱が一本もない樽熟庫が建設され、このボデガは今も樽熟庫として使われています。

1915年にはスペイン初といわれる白ワインのブランド、「モノポール Monopole」を発売。1920年にはリオハ・アラベサで造ったワイン。「ビニャ・レアルViña Real」を発売。同じ1920年には英国市場向けに「インペリアルImperial」を発売。少し間を置いた1970年、フランスのシャトーをイメージしたボデガ「ビニェドス・デル・コンティノViñedos del Contino」が作られました。

Enologa de CVNE

CVNEの醸造家アナ・サン・フアンさん

「インペリアルImperial」は、現スペイン国王フェリペ6世の結婚式にも使われた、特別なワインです。当初、特別な1パイント(約500ml)入りのボトルだったので「ピンタ(Pinta=パイントのスペイン語)・インペリアル」と呼ばれていたそうです。現在は通常の750mlボトルです。リオハ・アルタのブドウで、良い収穫年にだけ造られています。CVNEの敷地内に、2005年に新設されたボデガで、フレンチ・オークの木桶で、区画ごとに分けて発酵され、樽熟は前出のエッフェル作のボデガで行っています。

現在この4つのボデガを運営しているのは創設ファミリーの5代目で、1994年に創設者を称えて、リオハ・アルタのビリャルバVillalba村にある自社畑のブドウだけで造る「レアル・デ・アスアReal de Asúa」を発売しています。

最新作「アスアAsúa」は「レアル・アスア」の弟分で、若さとフレッシュさがウリです。ラベルの絵もカラフルで、他のワインとは一線を画しています。

CVNEは時代に合った新製品を出しつつも、長い伝統を守ってきています。創設当時からある地下のボデガには常に変わらぬ、しっとりした空気が漂い、壁や天井を覆う深いカビの中で、古い、古いヴィンテージのワインが静かに眠っています。

 

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