大西洋に浮かぶ緑の島、マデイラ島。ポルトガル本土からは約900キロ、アフリカ大陸からは600キロ。サッカー界の超スーパースター、クリスティアーノ・ロナウドの生まれ故郷で、2016年7月22日、マデイラ島の空港はクリスティアーノ・ロナウド・マデイラ国際空港と改名されています。
年中暑すぎず、寒すぎず、北欧の人たちの避寒場所として愛されていて、島の南側にある首都フンシャルから西に向かってリゾート地帯が伸びています。ただ、741平方キロと、小さな島ながら、一番高いルイボ山は1862メートルあり、標高が高くなればなるほど降水量が増え、緑が深くなります。
そもそも1419年、この島が発見されたときは、海原にこんもり緑の塊が浮き上がるように見えたとか。そのためポルトガル語の「木」＝「マデイラ」から取って、島の名がマデイラになったそうです。開拓を命ぜられた、島の発見者でもあるジョアン・ゴンサルベス・サルコは、作物を植えるに当たり、森を焼き払って場所を確保し、そこにブドウ、小麦、サトウキビを植えたのでした。こうしてマデイラ・ワインの歴史が始まりました。
マデイラ島は新大陸だけでなく、インド航路の中継地にもなっていたため、マデイラ島から積んでいったワインが、赤道を超えて往復し、戻ってきたとき、素晴らしくおいしくなっていたことから、「温める」熟成工程、エストゥファジェン（温水が通るジャケット付きステンレスタンクで加熱）とカンテイロ（自然の温度と湿度の環境で樽熟）が生み出されたという、特殊なワインです。
IBVAM (Instituto do Vinho, do Bordado e do Artesanato da Madeira, I.P.-RAM＝マデイラ・ワイン、刺繍、手工芸品協会) は6月18日（月）、銀座のレストラン「アルジェントASAMI」で試飲会とセミナーを行いました。今回の出展メーカーはドリヴェイラ、マデイラワインカンパニーのブランディーズ、バーベイト、ジュスティーノス、エンリケシュ・エンリケシュの5社でした。それぞれの社風、生産条件の違いなどから、各社の個性あふれる風味になっているのが、興味深いワインでもあります。
IBVAM会長パウラ・ジャルディンPaula Luisa Jardim Duarteさんからご挨拶があり、引き続き、「シェリー、ポート、マデイラの本」の著者（2003年小学館発行）として、明比淑子Yoshiko Akehiが、歴史、ブドウ栽培、ワイン造り、熟成工程他をご紹介するマスタークラスの講義を行いました。そのテイスティングでは、以下のように、各社1製品をご紹介。
Masterclass
- Barbeito Tinta Negra Single Harvest 2004
- ワインの発酵を途中で止めて、糖分を残すことによって、辛口から甘口まで4タイプを造り分けられる黒品種、ティンタ・ネグラを使った単一収穫年の中辛口。バーベイトはティンタ・ネグラの可能性を高く評価している。
- Blandy’s Colheita Verdelho 2000注）白ブドウの各品種は、セルシアルは辛口、ヴェルデーリョは中辛口、ブアルは中甘口、マルヴァジアは甘口と、甘さの度合いが決まっている。
- ブランディーズ、リーコック、マイルズ、コサート・ゴードンといった歴史ある有名ブランドを有するマデイラワインカンパニーの主力ブランド。単一収穫年の中辛口、ヴェルデーリョ。
- H&H Boal 15 years
- 総ブドウ栽培面積が500ヘクタールに至らず、小さな栽培農家のブドウを買い集めてワインを造るのが一般的なマデイラにおいて、最初に自社畑10ヘクタールを作ったメーカー。平均15年熟成の中甘口、ボアル。
- D’Oliveira Sweet 15YO
- 古いヴィンテージのワインをたくさん持っていることで知られるメーカー。ショップでは1800年代のものも販売。ティンタ・ネグラで造る15年熟成の甘口。
５．Justino’s Malvasia Colheita 1997
最新式の設備を持つジュスティーノスは300や350リットルの小樽をかなり使っているのが独特。収穫年1997年の甘口、マルヴァジア。
なお翌19日にはＷＳＥＴ受験コースで知られるワインスクール、キャプランにてセミナー実施。こちらは同じ5社で、以下のワインを試飲。
１．D’Oliveira Dry 15YO
２．Henriques & Henriques Verdelho 10 years
３．Barbeito Tinta Negra Single Harvest 2004
４．Madeira Wine Company Blandy’s Bual Colheita 2002
５．Justinos Malvasia 10 years
マデイラ・ワインに関しては、IVBAMのホームページwww.ivbam.gov-madeira.pt/をご参照ください。
