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シェリー・アカデミー研修ツアー2026 (3) Sherry Academy 2026 III

Lustau ルスタウ

クラナからエル・プエルト・デ・サンタ・マリアへ向かいます。途中塩田やカディスに渡る新しい橋などを見ながら走るのは、まさにマリスマの中。左は大西洋、右はカディス湾という絶景ポイントも通りました。

ゴンサレス・オブレゴンGonzález Obregón

向かう先はエル・プエルトの町中にあるボデガ兼ショップ件バル兼タベルナ、酒屋の角打的ボデガ、ゴンサレス・オブレゴンです。いわゆるアルマセニスタのホセ・ルイス・ゴンサレス・オブレゴンJosé Luis González Obregónさんがワインの熟成庫のスペースで樽酒を量り売りし、一杯飲みたい人にはグラスで売り、つまみたい人にはタパスや軽い食事も出すといったスタイルです。

けれどもシェリー・ファンにとってアルマセニスタと言えばルスタウ社の希少な高品質シェリーのシリーズです。

ルスタウ社は1896年、裁判所の書記だったホセ・ルイス・ベルデホ氏が自分の地所でブドウを栽培し、ワインを造り始めたのが起源になっています。彼はワインを大手のボデガに売る、いわゆるアルマセニスタでした。後に娘のマリアMaría Ruiz-Berdejo Albertiがヘレスの町中にボデガを入手してワインの熟成庫としました。1940年代、マリアの夫エミリ・ルスタウ・オルテガEmilio Lustau Ortegaは、ボデガをヘレスの町のアラブの城壁も含む地域に移動し拡大します。1945年ルスタウはアルマセニスタから輸出業者へと業態を変えました。そして1980年代、ラファエル・バラオRafael Balaoの優れた感覚で近代化を果たし、アルマセニスタ・シリーズが誕生しました。

現在アルマセニスタ・シリーズには7つのワインがありますが、そのうち3つが、今回訪問した ゴンサレス・オブレゴンのものです。

町中のボデガは見たところそれほど大きくはないので、多分どこかにもう一か所ボデガがあるのでしょう。オーナーのホセ・ルイスさんが闘牛好きということで、店内にはポスターや闘牛の頭のはく製など、闘牛関係のオーナメントがいっぱい。立てておかれた樽をテーブルにしてご近所さんらしき人達が熟成樽の前でワインを飲んでいます。私たちは奥の、やはり樽に囲まれたスペースに移動。ホセ・ルイスさんも登場して、タパスをつまみながら、角打ち気分に浸りました。ジャガイモのマリネPatatas Aliñadasが美味。

アルマセニスタ・シリーズのゴンサレス・オブレゴンには5年熟成のフィノFino del Puerto、12年熟成のアモンティリャドAmontillado del Puerto、12年熟成のオロロソOloroso del Puertoがあり、各々143樽、10樽、110樽で熟成されています。ということは、アモンティリャドが一番希少価値が高そうです。

 

次はルスタウの親会社ルイス・カバリェロが1961年に入手したサン・マルコス城Castillo de San Marcosを訪問。10世紀頃建てられた回教寺院Mazquitaが、13世紀に国土回復運動でキリスト教徒の手に渡り、教会に改築された後、何度か手が加えられていますが、1961年からルイス・カバリェロ社が所有しています。イスラム独特の美しいアーチが並び、メッカの方向を向いた祭壇が設えてあるホールは様々なイベントに貸し出されているそうです。

この城のボデガで熟成されているのが、アルマセニスタ・シリーズのアントニオ・カバリェロAntonio Caballero y Sobrinosによる18年熟成のアモンティリャド・デル・カスティーリョ(城のアモンティリャド)Amontillado del Castillo。38樽しありません。

 

ルスタウLustau

エル・プエルトの訪問を終えた後はヘレスの「ルスタウ」社へ向かいました。

1990年、ルスタウはホセ・エステベス社の傘下に入ります。そして2000年、1940年代から使っていたボデガから現在のボデガに移転しました。ここには19世紀に建てられた、いわゆるカテドラル方式の天井の高い、大きな空間のある素晴らしいボデガが6棟あります。

ラ・エンペラトリスのボデガBodega La Emperatrizは高いアーチを支える支柱が円筒になっているのが他にはない大きな特徴です。正面の丸いステンドグラスが印象的なこのボデガは1848年に建てられたもので、最もエレガントなシェリーのボデガと言っていいでしょう。

ここではアモンティリャド・エスクアドリーリャAmontillado Escuadrillaが熟成されています。けれども、ボデガの名前にもなっているエンペラトリス=皇后エウヘニアがヘレスを訪問した記念としてルスタウが1921年に設定したソレラを使った15年熟成の、オロロソ・エンペラトリス・エウヘニアOloroso Emperatriz Eugeniaも熟成されています。ちなみにエウヘニアEugenia de Montijoはナポレオン三世の妻でグラナダ生まれのスペイン人でした。

 

5日目最終日 1月23日(金)

最後の日はヘレスからサンルーカルに行き、ヘレスに戻ります。

ボデガス・ルイス・ペレス Bodegas Luis Pérez

 今、飛ぶ鳥を落とすと言っていいぐらい勢いのあるボデガです。私なりの表現をさせていただくと、シェリーをシンプルに、大地から生まれるワインに戻そうという動きをリードしていると言えるかと思います。私がシェリーを調べ始めた1980年代からつい最近まで、シェリーは酒精強化ワインであり、クリアデラとソレラの熟成システムを使っていることに重きが置かれ、注目されてきました。確かにそれは熟成されたワインを安定した品質で大量に出荷するためには大変合理的な方法であり、かつ、各ボデガが持っている古いソレラの個性と、熟成庫の特性が相まって、ブランドの味を維持していることを考えると、非常にユニークなワインだと言えます。

ただ、このシステムが確立されたのは19世紀なので、3000年の歴史を語るシェリーにとってはごく最近のことであり、さらには、地元の人々は1970年代まで酒精強化しないワインを飲んでいたといわれているので、「そもそもこの地のワインって何?」という疑問が湧くのは当然かと思います。それに応えるのが「ビノ・デ・パストVino de Pasto」でしょう。日常酒と考えていいと思います。地元で飲むなら輸送に耐えるよう酒精強化して丈夫にする必要はありません。ビノ・デ・パストはスティル・ワインです。スティル・ワインといえば、誰もが語るのはテロワールです。

テロワールを表現したシェリー=ヘレスのワインを造ろうというテーマを掲げたグループがあります。テリトリオ・アルバリサTerritorio Albarizaです。それをリードするのが今回訪問したルイス・ペレスのウィリー・ペレスWilly Perézと2024年のシェリー・アカデミーで訪問した「コタ45 Cota 45」のラミロ・イバニェスRamiro Ibáñezで、前日訪問したプリミティボ・コリャンテスもメンバーです。

 ボデガス・ルイス・ペレスは「ヘレスは畑に戻るべしJerez debe volver al viñedo」という前提のもと、何世代にもわたってワイン造りに従事してきた一族の出身で、カディス大学の醸造学教授であり、ドメック社の醸造家だったルイス・ペレス氏が2002年に立ち上げたプロジェクトです。現在これを率いるのが息子のウィリーです。

徹底的に土壌を研究し、外来品種も含む多くの品種の栽培を試した末、2013年にテロワールを反映した酒精強化しない、昔ながらのシェリー造りのプロジェクトを開始しました。そして2017年には旧来のビノ・デ・パストの復活を始めています。シェリーに使うブドウはパゴ・カラスカルCarrascalの畑のもので、ビノ・デ・パストにはパゴ・マチャルヌードMacharnudoのものを使っています。

今回訪問したのはアシエンダ・ビスタエルモサHacienda Vistahermosa。美しい眺めの農園という意味の醸造熟成設備を擁するボデガの本部です。標高115m。周囲にヘレス一帯の景色が広がる美しいボデガです。

案内して下さったフラン・ロペスFran Lopezさんは販促担当ですが、ルイス・ペレスの顔のような方で、説明は完璧です。アルバリサの説明には3種のサンプルが登場。さらにアルバリサを構成する珪藻や放散虫の説明に模型が出てきたのは初めてです。色が真っ白なわけや、水分を保持できることはこの構造のよるものだということがよく分かります。

試飲は全部パロミノ100%のワインです。

ムエーリャ・デ・オラソMuelle de Olaso :バラフエラ土壌の樹齢40年のパロミノ100%。80%はステンレスタンクで発酵。20%は天日干ししシェリー樽で発酵。両者をブレンドしてシュールリ6か月。

ラ・エスクリバナLa Escribana :標高100mのバラフエラ土壌で栽培されるパロミノ100%。ステンレスタンクで発酵後、シェリー樽でフロールと共に12か月熟成。

ビリャマルタVillamarta : 樹齢40年のパロミノ100%。樽で自然発酵。アルコール度15%。フロールと共に熟成。

ラ・バラフエラ2017 ドス・パルマスLa Barajuela 2017 Dos Palmas  : 樽で自然発酵。アルコール度15%。澱引き後フロール付きで樽熟8年。

カベルビア第9回出荷 Caberrubia  Saca IX :  パルマと同じ造り方のワインを毎年取っておいて熟成を続け、その中から選んでブレンドするためビンテージなし。毎年ブレンドに使うワインは異なる。

バラフエラというのはアルバリサのタイプの一つで、50%ほどがチョークで間に石灰に鉄分が混じった層が挟まれているためトランプの束(=バラ)のように薄い層になって見える土壌のことです。

アルバリサのタイプは、最近よく語られるシェリーの畑のテロワールのテーマになっています。

 

ボデガス・イダルゴ・ラ・ヒターナBodegas Hidalgo – La Gitana

次はサンルーカルです。マンサニーリャの代表的ブランドの一つラ・ヒターナのメーカー、ボデガス・イダルゴ・ラ・ヒターナ社に向いますが、途中にある畑エル・クアドラドEl Cuadradoに寄ります。オーナー・ファミリー8代目のフェルミン・イダルゴFermin Hidalgoさんは、ぜひラ・ヒターナのもとであるブドウが栽培されている畑から知っていただきたいとのことです。もちろん喜んで!

この畑は標高が高いので、大西洋に向って開けた周り一帯が見渡せます。アルバリサ土壌なので晴れていれば真っ白なはずなのですが、雨が降ったため、残念ながらグレー。畑に一歩足を踏み入れると、靴にごってり泥が付いてきてしまうので、遠慮させていただきました。丁度剪定が終わった時期で、バラ・イ・プルガルというこの地域独特の剪定を行った樹の形がよくわかります。アセルピアドという雨水を流してしまわないようにせき止める溝も見られます。

ここでは収穫、発酵、酒精強化、クリアデラとソレラの熟成システムに入る前の保存の行程が行われています。その一角に熟成樽が積まれたスペースがあります。これはフィノです。この畑はヘレス市の行政区域内にあるため、ここで熟成されている生物学的熟成のワインはマンサニーリャを名乗れません。ラ・ヒターナと同じ原料ですが、フィノになります。

サンルーカルに到着。ラ・ヒターナのボデガは町の中心のすぐ横にあります。1792年創業の古いボデガです。現在のボデガが立てられた当時はグアダルキビール川まで何も遮るものがない、大西洋から吹いてくる低温高湿度の風ポニエンテをまともに受ける、マンサニーリャの熟成には最適な条件がそろったところでした。

ここでも樽からマンサニーリャ・ラ・ヒターナを試飲させていただき、さらに、長期熟成マンサニーリャ、マンサニーリャ・パサダ、パストラナPastranaもいただきました。そして最後はフェルミンさんが「愛情をこめて“養老院”と呼んでいます」という中地下になった小さなボデガで何十年も熟成されたシェリーの中からアモンティリャドをいただきました。フロール付きで熟成を始めたワインの3段階の変化が分かる試飲でした。最後のアモンティリャドは格別です。

その後、グアダルキビール川の河畔、バホ・デ・ギアのレストランで昼食をいただきました。まさにサンルーカルならではの新鮮なシーフード満載です。エビ、ぺスカイート・フリートと呼ばれる各種シーフードのフライそしてアロス・ア・ラ・マリネラつまりシーフード・リゾットを通常のラ・ヒターナと、レストランがバルクで買ってきて店でボトルに詰めて出しているラ・ヒターナを飲ませていただきました。どちらもどんどん飲めてしまう美味しさでした。

バルデスピノValdespino

こうして残すところは最後の一軒。ヘレスのバルデスピノValdespinoです。

 バルデスピノは多分ヘレスで最も長い歴史を持つボデガと言えるでしょう。その歴史は1264年、国土回復運動で賢王といわれたアルフォンソ10世がヘレスの町をイスラム教徒の手から解放した際、従軍貴族に褒賞として土地を与え、ブドウ栽培を促します。その騎士の中にアルフォンソ・バルデスピノがいました。その後1430年にバルデスピノ家がワイン・ビジネスに携わっていた証拠になる記録はありますが、会社を設立したのは1875年のことでした。

かつてはヘレスの町中にあったボデガですが、1999年にホセ・エステベス・グループGrupo José Estévezの傘下に入り、現在はヘレスの町の外環状道路の外側のプラントに入っています。とはいえ、そのボデガはスペクタキュラー!

バルデスピノが素晴らしいのは、最高のアルバリサ土壌と言われるパゴ・マチャルヌド・アルトPago Macharnudo Altoに自社畑を持ち、そこの収穫でフィノを造るに当たり、全て樽発酵を行っていることです。そして時間をかけてフロールのもとで樽熟成し、再度の酒精強化なしで、アモンティリャドの一番若いワインのクリアデラに補充され、さらに時間をかけて熟成が続けられていきます。まだフルーティさの感じられる若いワインから徐々に熟成度が上がって複雑さが増していく変化を試させていただきました。あらためてフィノ・イノセンテInocenteとアモンティリャド・ティオ・ディエゴTio Diegoを飲んでみていただけるといいかと思います。

そして最後はシェリー・アカデミー2026修了証書授与です。シェリー&マンサニーリャ原産地呼称統制委員会会長セサル・サルダーニャCésar Saldaña氏から一人ずつ修了証書を授与させていただきました。

 

今回は、シェリーの生産認定地を広く周ろうと頑張ったので、移動距離が長かったかもしれません。けれども、マルコ・デ・ヘレスMarco de Jerezと呼ばれるシェリー生産地域をいろいろな角度から見ていただけたのではないかと思います。

 

このツアーは毎年秋に行われていたベネンシアドール公式資格称号認定試験で最優秀に選ばれた方をご招待する形で行っているため、1月末に実施してきましたが、次の2026年の試験は、秋をパスして翌2027年春に変更する予定です。そのためシェリー・アカデミーもその後ということで、春になります。また別のマルコ・デ・ヘレスを見ていただけるかと思います。まだいらしたことのない方も、既にこのツアーにご参加いただいた方もぜひ、ご参加ください。

 

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