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シェリーの規定に変更が!Cambio de los Pliegos de Condicionaes de los vinos de Jerez y Manzanilla

3000年の歴史を持つアンダルシアのワイン、シェリー。1932年にスペインのワイン法ができた時、すでに原産地として認められていたヘレス/シェリー。世界の三大酒精強化ワインのひとつとしてポートやマデイラとともに長い間愛されてきたシェリー。

そのシェリーが今、変わろうとしています。というより、本来の姿を見直そうとしているといった方がいいでしょう。

原産地呼称(DO)シェリー&マンサンーリャの統制委員会から届いた「新仕様書Nuevos Pliegos de Condiciones」に導入されることが決まった変更をご紹介します。これは8月の統制委員会代表委員総会で承認されたものですが、なお仕様書の発効には、アンダルシア州政府の承認と公の発表が必要ですので、もう少し時間がかかります。変更された仕様書が発表された際、多少表現が変わっている可能性もありますが、現時点での情報をお伝えします。

 

1.認定地

これまではヘレス・デ・ラ・フロンテラJerez de la Frontera、エル・プエルト・デ・サンタマリアEl Puerto de Santa María、サンルーカル・デ・バラメダSanlúcar de Barramedaが生産地域&熟成地域として認定されていて、この3都市以外のトレブヘナTebujena、レブリハLebrija、チピオナChipiona、ロタRota、チクラナChiclana、プエルト・レアルPuerto Realは生産地域であり、ここで熟成されたワインはDO認定を受けられませんでした。ただ最近モスカテルだけは同品種のブドウの産地の中心であるチピオナとチクラナで熟成してもDO認定がもらえることになっていました。けれども今回の変更で、いずれの町で熟成したワインでもDOを名乗れることになりました。またヘレスから独立したサン・ホセ・デル・バーリェSan José del Valleも、もともとDO認定地の境界線内にあった地域はDOに認定されます。DO認定地の東の境界線は西経5° 49´です。

2.認定ブドウ品種

シェリーに使われるのはパロミノPalomino、ペドロ・ヒメネスPedro Ximénez、モスカテルMoscatelの白ブドウ3品種。これは1935年に統制法ができて以来の決まりでした。けれども今回、統制法発効以前に戻ります。かつてこの地域では様々な品種が栽培されていました。けれども19世紀末にフィロキセラの害に遭い、新たに植え替えるにあたり、台木に接ぎ木することになり、一番シェリー造りに向いた品種が選別された結果でした。

そこで今回、フィロキセラ禍以前に栽培されていた品種も認定することになったのです。それがベバBeba、カニョカソCañocazo、マントゥオ・カステリャノMantúo Castellano、マントゥオ・デ・ピラスMantúo de Pilas、ペルーノPerruno、ビヒリエガですVigiriega。いずれも白品種です。なお今回統制委員会から送られてきた文書には、これまでの認定品種名として、パロミノ、パロミノ・フィノPalomino Fino(リスタンListán)、モスカテル、ペドロ・ヒメネスと書いてありましたので、併せてお知らせします。

3.ヘレス・スペリオール

ブドウ畑にはヘレス・スペリオールJerez Superiorとヘレス・ソーナとJerez Zonaいう二つのランクがありました。スペリオールが上級です。これまでその畑はヘレス・エル・プエルト、サンルーカル、トレブヘナでしか認定されていませんでしたが、これからは市町村の区分に関係なく、土壌の質によって判断されることになりました。

4.酒精強化

酒精強化ワインでないシェリーが公式に登場します。これまでシェリーは「リキュール・ワインVinos de licor」に分類されていたため、発酵によって得られる自然の度数と関係なく、常に酒精強化が義務付けられていました。けれどもこれからは発酵によるアルコール度だけで最低度数に達していれば、酒精強化する必要はなくなります。

これを実践しているのが「ボデガス・ルイス・ペレスBodegas Luis Pérez」です。収穫後ブドウを天日干しし、果汁の糖度を上げてから発酵させるため、発酵が終わると酒精強化しなくていいアルコール度数に至るため、酒精強化せずに樽熟成に移します。これは伝統的な製法を復活したものです。http://bodegasluisperez.com

5.DOサンルーカルのフィノは不可

「サンルーカルで生物学的熟成するワインで、仕様書の条件を満たすものは全てマンサニーリャとなり、フィノに分類されることはない。」この項目は一般消費者にはわかりにくいかもしれません。サンルーカルでフロールのもとで熟成されるワインがすべてマンサンーリャとして販売されてはいなかったということです。そこで、マンサニーリャがサンルーカルだけのもので、独自の原産地呼称を持っているなら、サンルーカルのこのタイプは全部マンサニーリャであってしかるべし。フィノは認めませんということです。フィノを持っているボデガは在庫を処分するか、サンルーカル以外の所に移動しなければならないとのことです。

6.ビノ・ヘネロソの残糖量

ビノ・ヘネロソVino generosoは辛口タイプの総称です。その残糖量はこれまで5g/ℓ未満でした。これからは4g/ℓ未満に下がります。ただ、ブドウ糖と果糖だけが対象となり、以前のようにその他の還元糖は含まないとのことです。いずれにしろフィノやマンサニーリャは限りなく辛口なので、この件には関係なさそうです。

7.ドライの定義

「ペイル・ドライPale Dry」と「ペイル・クリームPale Cream」、「ミディアム・ドライMedium Dry」と「ミディアム・スイートMedium Sweet」の境のは45g/ℓではなく、50g/ℓとするとのこと。ペイル・ドライというのはこれまでドライと呼ばれていた、フィノをベースとした軽い甘口タイプです。英国が主な市場で、今のところ日本で目にすることはまずありません。一方ミディアムの方は「ミディアム・ドライ」というラベル表示もよく目にするし、「ミディアム」、「ミディアム・スイート」という表示もあります。いずれも基本的にはアモンティリャドをベースにした軽めの甘口です。これまでも仕様書の追記にしか出ていなかったその残糖量の境ですが、これまでより5g/ℓ増えて50g/ℓになりました。

8.生物学的熟成タイプの長期熟成タイプ

DOマンサニーリャの認定タイプとして、長い熟成期間を経たとされるマンサニーリャ・パサダManzanilla Pasadaがあります。ただ、普通のマンサニーリャとパサダの境界線があいまいでした。今回、熟成期間7年以上をパサダというと規定されました。それと同時に、同じくフロールのもとで熟成するけれど熟成地がサンルーカルでないフィノに関しても、「フィノ・ビエホFino Viejo」という名称がつけられ、最低熟成期間7年という設定がされました。

9.濃縮果汁

ビノ・ヘネロソ・デ・リコールVino Generoso de Licorは基本として、辛口シェリーをベースに、ごく甘口のビノ・ドゥルセ・ナトゥラルをブレンドして作る中間の甘さのシェリーを指します。今回の規定は、濃縮果汁もビノ・ヘネロソ・デ・リコールを造る際に添加できる補足製品に含めますが、その原料は認定地域内のブドウでなければならないということです。

  1. エン・ラマ

樽の中のシェリーにできる限り近い風味を味わってほしいということで登場し、人気を博している「エン・ラマen rama」ですが、これまでは表示に関する規定がありませんでした。今回ラベリングに関する付属文書が作られ、「エン・ラマ」とは清澄も冷却処理もしていないワインのこと、という用語の使用条件が定められました。

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