2022年、最初の収穫開始情報はヘレスから入りました。
7月28日未明、「ボデガス・フンダドールBodegas Fundador」が、マチャルヌードMacharnudoとオブラネハObranejaという2つのパゴpago(畑の区画)にある330ヘクタールに及ぶ自社畑で、機械収穫を始めました。
シェリーの産地のブドウの収穫はもともと9月前半でした。ところが地球温暖化で、毎年時期が早まってきて、近年は8月半ばに始まるようにまでなっていました。そして今年、ついに7月中に始まってしまったのです。
ヨーロッパを襲った熱波でスペインでは40℃を超す暑さが続き、山火事が発生するなど、異常な状況が続いていました。
シェリーの産地はスペインの南端部分を占めるアンダルシア州の中でも南西部に位置する、ヨーロッパの中で最も南部にあるワイン産地と言えます。そして、この2つのパゴはシェリーの産地の認定畑の中でも内陸にあることから、通常、収穫は海に近い地域より早めに始まります。
それにしても、まだ7月だというのに収穫を始めたのには訳があります。暑さのため、熟成が急速に進む一方、実が大きくならず、酸も多めのままですが、これ以上待つと、実の水分が減っていくばかり。今なら確保できる収穫量さえも失ってしまう可能性があるからです。質としては大変高いとのことです。ちなみにこの収穫は「ハーベイズHarvey’s」と「ガーベイGarvey」ブランドのワインに使われるそうです。
この地域特有の大西洋から吹く低温高湿の風、ポニエンテが吹くのを待って、通常の収穫量を維持したいというボデガもあるようです。けれども全体的に収穫量は減る見通しで、シェリーとシェリー・ビネガーの生産に必要な量の他に、現在大きなビジネスになっているウィスキー熟成樽のシーズニング用のワインも必要なため、今後の天候の変化が気になるところです。
8月8日、スペインのほぼ中央にあるDOPビノス・デ・マドリッドで収穫が始まりました。通常より2週間ほど早いとのことです。
ビノス・デ・マドリッドにある4つのサブゾーンのうち、一番西の端にあるサン・マルティン・デ・バルデイグレシアスSan Martín de Valdeiglesiasにあるボデガ、「ラス・モラダス・デ・サン・マルティンLas Moradas de San Martín」です。品種はアルビーリョ・レアルAlbillo realという白ブドウで、マドリッドの地場品種です。収穫は手摘みで、朝日が差し始めるころに開始します。品質は非常に高く、量的にも昨年と変わりないとのことです。
この地域の主要な黒ブドウは、地場品種のガルナチャです。その収穫は、このままの天候が続けば、通常より早まって8月中に始まるかもしれないとのことです。
地中海沿岸地域、バレンシア州からも収穫が早まるというニュースが届きました。DOPウティエル・レケーナUtie-Requenaの副会長で、バレンシア農業協会(AVA-Asaja)ワイン部門の責任者である、ぶどう栽培家のホセ・ルイス・ロブレードJosé Luis Robredo氏によると、暑さと干ばつのため、今年の収穫は、例年に比べて5日から 10日ほど早く開始される可能性があるとのことで、8月中旬には始まることになりそうです。
2022 年の気候は不安定で、冬は気温が大幅に低がった一方、夏は熱波に襲われています。予報では、これから収穫期にかけて、暑さはおさまる見通しですが、あとは雹が降らないことを願うばかりとのことです。
ウティエル・レケーナでは収穫量は昨年度と変わりなく、品質も上々であろうと予想されています。
冬は寒波、夏は熱波に襲われているスペインですが、今年も収穫が各地で徐々に始まってきています。北部内陸のDOCaリオハでも通常より2週間早く始まるとのこと。最終的には良い収穫の年になることを願っています。