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イビサ島初上陸!(1) Primera vez en IBIZA -1

スペインはイベリア半島だけではありません。最近注目されている大西洋マカロネシアの一員、カナリア諸島、そして地中海の大リゾート、バレアレス諸島があります。これまでカナリア諸島主要7島、バレアレス諸島のマヨルカ島とメノルカ島は訪問していましたが、イビサ島とフォルメンテラ島だけはまだでした。ちょうどイビサ島のボデガ「カン・リックCan Rich」のアルバロ・ペレスÁlvaro Pérez Navazoさんが是非にと誘ってくださったので、遂に行きました。9月13日到着、18日離島。これでスペインの主要な島を全島制覇!  その他の島探訪記はwww.vinoakehi@com をご覧ください。

今回は、フェニキアの遺跡や、地場品種栽培試験場、ボデガ4社の訪問をアルバロさんがアレンジして下さいました。

ちなみに彼はワイン業界で30年近くにわたり生産、マーケティング、戦略に携わってきた方で、現在は奥様のご実家でもあるカン・リックを率いて、気候変動に対応した精密なブドウ栽培と、より体系的で現代的なポートフォリオの構築に取り組んでいます。

バレアレス諸島には主要な島が4島あり、2つのグループに分かれています。マヨルカ島とメノルカ島を主とするヒムネシアス諸島islas Gimnesiasと、イビサ島とフォルメンテラ島を主とするピティウサス諸島islas Pitiusasです。この4島に2つの原産地呼称保護DOPと6つの地理的表示保護IGPがあります。DOPはいずれもマヨルカ島にあるビニサレムBinissalemとプラ・イ・リェバントPla i Llevantです。IGPは主要4島各島をそれぞれカバーする4つの他、バレアレス諸島全体をカバーするもの、マヨルカ島北部山脈地域をカバーするものがあります。

今回はIGPイビサVino de la Tierra Ibiza(通常、例えばビノ・デ・ラ・ティエラ・デ・カディスのように、ティエラの後にデが入るのですが、イビサはほとんどの場合デを入れていないので、ここでもデは省くことにしました)と、この際行っておきたいと思って自力で到達したIGPフォルメンテラVino de la Tierra de Formenteraです。フォルメンテラ訪問記は別途お届けします。

バレンシアから空路50分ほどでイビサ空港に到着。イビサはパーティ島のイメージが定着しているようで、イビサに行くと言うと必ず「あぁ、パーティの島ね」という反応。確かに中心都市のイビサIbiza/エイビッサEivissaの中心にある港地区はパーティ族の天国らしく、軽やかで華やかなビーチファッションの観光客が町中にあふれていました。イビサの旧市街、小高い丘全体を城壁で囲んだダルト・ビラDalt Villaは急な坂道ばかりですが、ゴム草履の人がかなりいました。

インターナショナルなリゾートなので共通語はほぼ英語。もちろんスペイン語は通じますがカタルーニャ語が地元用語です。

レストランのワインリストもインターナショナル。けれども「カン・リックCan Rich」のアルバロさんご推薦のバルではイビサのボデガのワイン各種を扱っていました。グラスワインが6.5€~。マドリッドよりはるかに高い!

 

イビサのワインの起源

スペインワイン3000年の歴史は紀元前1100年頃フェニキア人たちが現在のシェリーの産地があるカディス県の中心地カディスにブドウ栽培とワイン造りを伝えたことに始ります。ここイビサ島もワインの歴史は紀元前7世紀のファニキア人到来から始ります。

海洋貿易に長けたフェニキア人が拠点を置いたのは地中海西南部からジブラルタル海峡を抜けた大西洋岸地域南部で、スペイン南部沿岸地域、アフリカ大陸北岸西部や地中海西部の島々が含まれています。

(注:後述サ・カレタ情報センターSa Caleta Centre d’Informació展示地図)

さっそくファニキアの遺跡を見学に行きました。フェニキアの遺跡を研究している考古学者のアンドレアAndrea Torres Ferrerさんが案内してくださいました。

最初は街中の発掘現場です。畑の灌漑の溝の遺構を掘っている真っ最中。スペインではビルを建てるために敷地を掘り、遺跡が発見されると、工事は一時停止。発掘調査終了まで手が付けられません。その上、経費はビルを建てたい人が支払うとのこと。

イビサ島南西部の町サ・カレタSa Caletaには紀元前7世紀のフェニキア人の集落跡と情報センターがあります。かつて超貴重品とされ、交易の大きなポイントになっていた、高貴とされた紫色の染料を採るための貝が採れたこともフェニキア人がイビサに拠点を作った要因の一つです。そして海洋民族になくてはならない港は、地中海の真っ青な空のもと、海の水が穏やかにきらめく小さな入り江にありました。

情報センターにはフェニキア人がもたらしたアルファベットの源といわれる文字や、ワインを保存したり輸送したりするのに使われたアンフォラや食器、その他の生活用具が展示されていて大変興味深かったです。発掘跡にオリーブの実を潰す石臼はありましたが、ブドウ踏みをする石造りの槽、ラガールがなかったのがちょっと残念でした。

この遺跡は世界遺産に認定されています。

近くにはプッチ・デス・モリンスの古墳群(ネクロポリス)Necroporis Puig des Molinsがあります。フェニキア人、カルタゴ人、ローマ人、アラブ人のお墓が混在した墓地で、小高い岩山のそこここに長方形の深い穴が掘られた跡が残っていました。目の前は真っ青な地中海。ここも世界遺産です。

 

IGPイビサ

ビノ・デ・ラ・ティエラ・イビサVino de la Tierra Ibizaが認定されたのは2004年。現在、登録ボデガは5社;(abc順)カン・マイモCan Maymó、カン・リックCan Rich、イビスクスIbizkus、オホ・デ・イビサ Ojo de Ibiza、シュメウ・ビニャXumeu Vinyaです。

イビサ島は北東部と南西部にまとまった山々がありますが、最高峰は南西部にあるサ・タライアSa Talaia山で475m。500mに至りません。けれどもその合間にはブドウ栽培に適した小さな谷がいくつもあります。土壌は石灰岩、苦灰岩、泥灰岩から成り、大部分は赤褐色の粘土質ですが、石灰質の層も含まれています。島のため浸食が激しく、岩が露出した部分が多くあります。

乾燥した亜熱帯地中海性気候で、日照時間が多く、夏は高温高湿度で、冬は穏やかな気温が特徴です。年間降水量が400㎜と、少ないため、地下水が重要な水源になっています。

ブドウ栽培面積は60ha弱で、認定ブドウ品種は白ブドウがマカベオ、シャルドネ、モスカテル・デ・アレハンドリア、モスカテル・デ・グラノ・メヌド、パレリャダ、マルバシア。黒ブドウはモナストレル、テンプラニーリョ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、シラー。ワインのタイプは白、ロゼ、赤です。

 

カン・リックCan Rich

最初に訪問したのは、アルバロさんのボデガ、カン・リックCan Richです。イビサの町から北北西に向った島の内陸部にあります。もう一か所、南西部、フェニキアの遺跡も近いところにカン・リャウディスCan Llaudisという地所も持っています。カン・リックは総畑面積が20ha。そのうち17haがブドウ畑で、あとはオリーブの木300本。カン・リャウディスは同じく20haですが、ブドウ畑は6ha。あとはオリーブです。

当然ながらどちらも地中海性気候ですが、カン・リックがあるブスカステルBuscastellという地域は東、北、西を標高300m近い山々に囲まれていて、内陸性の特性もいくらか備えています。石灰質の岩盤上の、細かい粒子の深い土壌です。一方カン・リャウディスの方は島の南部で、海に近いことから、同じく地中海性気候とはいえソフトで、土壌はローム沈泥質で軽い塩っぽさがあります。この条件の違いが、ブドウの成熟にも影響し、カン・リックの方がゆっくり熟成していきます。栽培する品種も違って、大雑把に言うと、黒ブドウはカン・リックで、白ブドウはカン・リャウディスです。

イビサ島の地図を見ると、海岸線には細かい字でビーチの名前がびっしり連なって書いてありますが、内陸部は道路の線と、まばらに町の名が記してあるだけです。実際、一旦町を出ると、周囲は緑がいっぱいです。たまにリゾートマンションと別荘風の家がある集落を通ることはあっても、あとは全く誰にも会いません。乾燥した茶色っぽい畑と緑がずっと続きます。一番多い木は松だそうです。

カン・リックのボデガは真っ白な建物です。ブーゲンビリアの濃いショッキングピンクが鮮やかに映えます。このボデガは1999年に建てられたものですが、畑はその2年前に植えられていて、2000年にはオーガニックの認定を受けています。もう一つのカン・リャウディスは2007年に植えられ、2022年にブドウ畑が2ha増やされて現在に至っています。

2024年からは新しい技術プロジェクトとして、イビサ議会Consell Ibizaと共同で、島に古くから伝わる地場ブドウ品種の復活を目指す実験栽培を実施しています。

イビサ島では10年以上前に、特定の畑のなかから選ばれたサンプルの遺伝子研究が始まり、島議会に属するカン・マリネス農業実験農場Finca de Experimentación Agraria de Can Marinesでの栽培が始っています。カン・リックはイビサ島のワイン遺産のアイデンティティを確立するため、選出された品種を接ぎ木して栽培するプロジェクトに協力しています。

今回はちょうど収穫期だったので、その農場を見学に行きました。カン・リックが試験栽培協力しているのは10品種。この日は白品種のグレックGrec、シンショXinxó、黒品種のフォルトMonastrell Fort Lluquí、モルMonastrell Moll (Llora)などが見られました。食べてみると、通常の畑で摘まむワイン用ブドウに比べて甘みが少なかったり、酸味が欠けていたりと、これまで積極的に選ばれてこなかった、つまり効率的なワイン造りに向かないとされてきた品種であることが感じられます。もちろん、これはいいのでは!と思われるものもありました。ここでは生食用の品種も試験栽培してます。

地道な選別と改良が繰り返され、しかも1年に1回しか結果を見ることができない、まさに忍耐の世界です。グレックとモルの名前はその後もよく登場しました。将来の期待がかけられている品種といえます。

イビサ島の在来品種は単にモナストレルMonastrellといわれていますが、イベリア半島南東部ムルシア地方の主要品種として認知されているモナストレルと、イビサ島のモナストレルは、出来上がったワインで比べると、違いが感じられると思います。もともと同一品種でも10世紀にも20世紀にもわたって異なる条件で育ってくれば、現在の特性が異なるのは当然と言えるでしょう。反対に今、同じ名前で呼ばれていても、もともとは異なった品種だった可能性もあります。モナストレルの探求は続きます。

このところ注目されている地場品種ですが、地域のアイデンティティということだけでなく、急激な気候変動に対処する手段として、長年その地で生き延びてこられた生命力にも高い関心が寄せられ、調査研究が進んでいます。そのため、古い混栽の畑も注目されています。

カン・リックが参加しているプロジェクトは「フィンカ・カン・リックにおけるイビサ島の古い品種の復活のための試験的ブドウ栽培」という名称で、目的はイビサ島に古くから伝わる在来品種の適応性を研究するためのブドウ栽培区画を確立し、イビサ島のブドウ品種の遺伝的資源としての評価、復元、保存し、さらに改良することです。この研究では、調査対象となる様々な品種の栽培・醸造の可能性、気候への適応性、それぞれの特性、そして高品質ワインの生産への適性を評価し、最終的に、注目すべき特性を持つ品種をスペイン植物品種庁Oficina Española de Variedades Vegetales(OEVV)に申請し、商業品種登録簿に登録し、将来的にイビサ島で利用できるようにすることを目指しています。

カン・リックのボデガはブドウ畑に囲まれています。試飲は周囲の畑が見渡せる2階のテラスで。ワインには3つのシリーズがあります。最初は軽いタイプのカン・リック・シリーズ。白(マルバシア+モスカテル・デ・グラノ・メヌド他)、ロゼ(モナストレル+テンプラニーリョ+シラー)、赤(モナストレル)です。フレッシュで地中海の風を感じるような飲み口爽やかなタイプです。ビーチリゾートにピッタリ、つまりは高温多湿の日本の夏にもピッタリのワインです。しっかり芯が通っていますが、軽やかなフルーティさ、軽やかな色、スッキリしたのど越しです。

次はアンフォラ熟成シリーズ。これも白(モスカテル・デ・グラノ・メヌド)、ロゼ(モナストレル)、赤(メルロー+モナストレル)があります。ボリューム感に深みや落ち着きがあり、ゆっくりお食事しながら飲みたいタイプです。

樽熟シリーズはクラシック・ラインとし、白のカン・リック・エレソCan Rich Eresoがマルバシア、赤のカン・リック・ラウソスCan Rich Lausosがメルロー+カベルネ・ソーヴィニョンです。熟成タイプは確かに旨みや深みがあるしっかりしたワインです。

アルバロさんはイビサ島で栽培されているモナストレルをモナストレル・イビセンコMonastrell ibicencoと言って、イベリア半島のモナストレルとはっきり分けていました。イビサ島のモナストレルのワインを試すのは初めてでしたが、これまで知っていたモナストレルとは明らかに違っていました。造り方にもよると思いますが、全体によりフルーティサ、ソフトさ、繊細さがあり、やさしいイメージがありました。

ちなみにカン・リックはアンセストラル(ペット・ナット)を含むスパークリング・ワインの他、ベルモット、リキュール、オリーブオイル、ビネガー、ハーブ、塩も生産、販売しています。

 

カン・リックはまだ日本に入ってきていません。ご興味のある方はご一報ください。

 

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