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イビサ島初上陸!(2)Primera vez en Ibiza (2)

イビスクスIbizcus

イビサ島のIGP登録ボデガ5軒のうち、一軒だけ日本にインポーターさんを持つボデガがあります。それがイビスクスです。

イビスクスは、島の名前イビサと、島でよく見る華やかな花、ハイビスカスとをかけ合わせた名称です。2007年にトテム・ワインズTotem Winesとして創業し、イビサ島では、規模の大きなメーカーのひとつに成長しています。今回は、つい最近就任なさった新しいディレクター、ジョナサン・タリJonathan Tariさんがボデガを案内してくださいました。アルゼンチンご出身で、アルゼンチンでも多岐にわたるビジネスを行っている方で、メンドーサのお話もありました。

ボデガはイビサ市から北東に向った内陸部にあります。54の区画に分かれた畑は総面積19ha。自社畑はなく、島全体に散在する契約農家からブドウを買っているそうです。

今回は会えませんでしたが、ワインメーカーのデビッド・ロレンソさんが、リアス・バイシャス、ビエルソ、プリオラトでの経験を踏まえ、イビサでも地場品種の可能性を研究するために何年も費やした末、現在のスタイルに至っているとのこと。つまり、地場品種である白のマルバシアと黒のモナストレルの個性を生かした高品質なワイン造りです。オーガニック栽培、灌漑なし、手摘み、自然発酵etc. 出来るだけブドウの自然の力を引き出そうとしています。

試飲スペースはバルの雰囲気です。イビスクスは島を訪れる多くの観光客に対するテイスティング・ツアーも積極的に展開しています。

テラス席にはくつろいでワインを飲む(試飲かも?)グループがいましたが、私たちは迷わず、居心地の良さそうなカウンターへ。そこでは共同管理者でマーケティング&セールス・ディレクターのヘンリク・スミスHenrik Smithさんが代表的なワインを紹介してくださいました。

カン・バソcan bassó、イビスクスibizcus、トーテムtotemの3つのシリーズがありますが、今回はイビスクスとトーテムを試飲。

イビスクス白2025はマルバシア・イビセンカ=グレック100%。イベリア半島のマルバシアと区別した呼び方です。まろやかなフルーティさで、酸もまろやかで、きれいなワインです。次はモナストレル100%のイビスクス・ロゼです。ボトルの栓がガラスなのがオシャレ。プロヴァンスのロゼのイメージを目指したとのこと。フルーティでエレガント。しっかりしているので、どんな場面にも対応できそうなワインです。日本の輸入元正光社さんのサイトによると、このロゼは主力商品で、イビスクスを築き上げたワインとのこと。確かにイビサ島の風を感じられそうなワインです。

トーテムはトップクラスのシリーズで、ロゼと赤をテイスティング。それぞれ畑の名前が記してあります。最初はラ・ベタLa Veta 2022。畑は1958年に植えられた、石灰質の砂質土壌で自根。この島にもフロキセラ禍を免れた畑があったようです。1本の樹に1房しか付けませんが、1つの房が顔より大きくなるのだそうです。ブラン・ド・ノワールのようなロゼとのこと。色は淡いですが、複雑で深みのある風味を持っています。次はラス・カンテラスLas Canteras 2021という別の畑のモナストレル100%。フルーツ味いっぱいで、クリーミーでボディしっかり。最後は赤のラ・カラLa Cala 2022。これも自根のモナストレル100%。美しい色で繊細、エレガントな赤です。

島のあちこちに点在する畑を持っていることがイビスクスのワインの面白さの要因の一つかもしれません。前出、ディレクターのジョナサンさんは、イビサの国際化を図るというテーマを持って、現職に就かれたとのことなので、これからの展開が楽しみです。

 

オホ・デ・イビサOjo de Ibiza

昼食は、ボデガ「カン・リックCan Rich」のアルバロさんご推薦で、イビサ島を縦断する街道の途中にあるグリル料理のレストラン「カン・カウスCan Caus」でいただきました。

ワインは、今回訪問できないボデガ「オホ・デ・イビサOjo de Ibiza」の赤「ティエラ・スールTierra Sur 2023」を選びました。フレンチオーク樽で1年熟成。肉料理にピッタリでした。

オホ・デ・イビサはイビサの目という意味です。ボデガはこのレストランから少し北北西に向った島の北岸に近いサン・マテウ地区にあるようです。ウェブサイトによると、アルゼンチンのメンドーサで25年以上にわたってオーガニック・ワインを造っていたDieter Meier(スイス人とのことで、お名前の読み方は不明)さんファミリーが2015年に創設したボデガとのこと。イビサ島は国際色豊かです。

 

シュメウ・ビーニャ Xumeu Vinya  

スパークリング・ワインが専門のボデガ、シュメウ・ビーニャは島の南西の端にあります。道々、森の緑の向こうに青い海が見えたりします。収穫した後のような何も植わっていない茶色っぽい畑や森が連なる道をさらに行くと、山の中の一角に白い建物が現れました。これがシュメウ・ビーニャのボデガです。出迎えてくれたアントニオ・マリ・プラッツAntonio Marí Pratsさんはまず一言、「いわゆるガレージ・ワインメーカーですよ」。

ボデガの白い壁際に植えられたブドウは、房一つずつにネットがかけられています。これはブドウの実が大好物のキジバトの害を避けるためのネットです。農業試験場で見た、垣根づくりのブドウの列に長い緑色のネットがかけてあったのも同じくキジバト除け対策です。イビサでは垣根仕立ての畑はハト除けネットが樹の下の方に準備されていて、ブドウの実が熟してくると一斉にネットを引き出して、上からすっぽり被せられるようになっています。そのため、ブドウの収穫はネット外しから始まります。

アントニオさんのボデガは、ワイン造りの行程の部分はガレージっぽく、いろいろな設備がコンパクトにまとまっていますが、瓶内二次発酵工程のボトル収納スペースは整然とボトルが積み上げられていて、スパークリング・ワインに特化したボデガである心意気が感じられます。名刺にはブドウ栽培者のスパークリングEpumoso de Viticultorと記してあります。

アントニオさんのファミリーは何代にもわたってこの土地でワインを造り続けてきていました。ご近所で、それぞれの家の作物を交換しあって生活が成り立っていた時代、彼の一家はワイン担当でした。ある時、アントニオさんは面々とワインを造り続けるだけでなく、もう少し理論的に安定したワイン造りをしようと思い立ち、レケーナ(バレンシア州)のブドウ栽培ワイン醸造学校Escuela de Viticultura y Enonogiaに入学。学ぶうちに、DOPカバの認定地でもあるレケーナで、伝統的製法と呼ばれる瓶内二次発酵製法のスパークリング・ワインの製法を習得。イビサで最高のスパークリング・ワインを造ろう!ということで始めたのがこのボデガです。

畑はイビサ島の西の端。海面まで180mの崖の上にある南東向きの斜面で、土壌は石灰質で砂質。海風を受ける位置にあります。

栽培する品種は地場品種のモナストレルとマルバシアの他、マカベオ、モスカテル、パレリャダ、シラー、シャルドネです。

試飲は白ワインから。砂質で石ころの多い土壌で栽培したマカベオ 2024です。しっかりした骨格でかすかな苦みが快いワインです。次はロゼのアンセストラル。モナストレル100%です。かわいい色で、赤いフルーツの香り、快い飲み口です。最後はモナストレルに少しシラーを加味したロゼのスパークリング。ブルットです。ティラージュは2022年。ここではスパークリングは最低30か月熟成します。きれいな泡立ちで、フルーツ味があり、ほのかな甘さが快いワインです。

 

シャメウ・ビ―ニャを訪問したとき、丁度やってきたのは、イビサ島北部で、オーガニックでブドウを栽培しているスイス出身の方で、「Blacknose黒鼻」というブランド名でワインを発売しています。ただ、醸造設備を持っていないので、アントニオさんのボデガでワインを造り、ボトリングまで行っています。この日はちょうどラベル貼りの日。せっかくなのでと、全員で試飲させていただきました。モナストレル100%の赤は熟した黒いベリー感たっぷり、酸もタンニンもしっかりして凝縮感があり、アルコール度は15%でした。

 

カン・マイモ Can Maymó

島の北部、イビサの町からほぼ北に向ったところにあります。ボデガの入り口は林の中の別荘のようなたたずまいです。けれども一歩中に入ると、ステンレスタンクが並び、樽熟庫や、赤いセメント・タンクがあったりして、まさにボデガです。

現オーナー&醸造家のアントニオ・コスタ・トゥールAntonio Costa Turさんは、これまで面々と造ってきたワインから脱して、イビサらしさを表現したワインに変えようと考え、カタルーニャ・ブドウ畑とワイン研究所Institut Catalá de la Vinya i el vi (INCAVI)に入り、醸造学を学びました。そして伝統と最新技術を採り合わせた自分のワイン造りを始めたのが1995年でした。

畑は島の北部3か所にあり、ブドウ栽培面積は合計7haです。土壌は石灰質で粘土質です。見せていただいた畑はかなり赤い色の区画と、わりと白っぽい区画がありました。通常、雨が少ない地域ですが、この日は今にも降り出しそうな黒い雲が空を覆っていました。

栽培品種は黒ブドウがメルロー、シラー、テンプラニーリョ、モナストレル。白がモスカテルとマルバシアです。中でも力を入れているのはイビサ島地場品種であるモナストレルとマルバシア ”グレック“ です。

試飲は別荘のテラスのようなステキなテーブルで。最初は白2本とロゼ2本。1本目はマルバシアとモスカテルのブレンドで、酸が通ったフレッシュでしっかりしたワインです。次はグレックGrecというブランド名を付けられたイビサ島のマルバシア100%のワインで、香りが豊かでフルーティ。ロゼの最初はモナストレル、シラー、メルローのブレンドで、フレッシュで、しっかりしたボディがあります。次のロゼはシラー100%。香り豊かで酸味のバランスがよく、底力のあるタイプ。赤は3本。最初は樽熟メルロー2023。メルロー主体でシラー、モナストレルをブレンドしたもので、フレンチオークとアメリカンオークで6か月熟成しています。アルコール度15%。次のメルロー100%はビンテージ2022年。フレンチオークで12か月熟成してあり、バランスの良い落ち着きのあるワインでした。

最後のティント・トラディシオンTinto Tradiciónはユニークなワインです。島で伝統的に伝わってきたワインの造り方で、プレマセレーションにブドウと一緒にタイムを入れるそうです。タイムはその辺に自然に生えているハーブです。思わず「タイムをそのまま入れてしまうの!?」と聞くと、「そう!!」とのこと。モナストレル80%、シラー20%。ワインはフレッシュで白い花のようなやさしい香りを持っていました。

1本1本が個性豊かなワインで、興味の尽きないラインナップでした。

 

最後にイビサ民族誌学博物館Museu Etnografic D’Eivissaを見学。島の伝統的な生活様式や習慣を物語る展示品には興味深いものがありました。ワイン造りの道具のコーナーには、上でブドウ踏みをすると下の容器に果汁が入る構造になった木製の仕掛けがありました。踏み桶の中はどうなっているのか、見えないので手を伸ばして写真を撮って見てみると、底に線状に穴が空けてあるのが分かりました。けれども穴が少なすぎるのではないかという疑問が残っています。いかがでしょうか?

 

こうして盛りだくさんのイビサ島訪問が終わりました。最終日、イビサ市に帰りついたときは豪雨になっていました。めったに雨が降らないイビサとしては珍しいことです。けれども、しばらくすると止み、港のヨットハーバーではびっしり並んだヨットの上に虹を見ることができました。イビサ島は7月、8月はリゾート客があふれかえっているそうですが、9月になれば、まだ夏のムードは続いていますが、大分落ち着いているとのこと。

いずれにしろ、ビーチに関係ない私は、ほとんど人気のない田園風景の中、豊かな自然に触れられる毎日でした。フェニキア人もきっとイビサ島は住みやすかったに違いありません。

今回印象に残ったのは、イビサのワインのなかでも白やロゼが本当に快く飲め、美味しかったことです。島のワインということで、島国で、空気がしっとりした日本にも合いやすいワインではないかと思いました。

イビサ島のワインは5社中、イビスクス以外の4社がまだ日本に輸入されていません。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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