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シェリー・カデミー2019 Sherry Academy 2019

シェリー&マンサニーリャ原産地呼称統制委員会シェリー委員会主催で2001年から実施している「シェリー・アカデミー」の研修ツアー。2019年は1月21日(月)出発、1月27日(日)帰国の1週間でした。プログラムは4日間です。

<1月22日>

09:00    シェリー原産地呼称統制委員会で会長ベルトラン・ドメックBeltrán Domecq氏による講義。今年はパゴPagoをフィーチャー。最近、スティルワインの世界ではビノ・デ・パゴ(単一ぶどう畑限定高級ワイン)の認定を受けるボデガや、単一畑産を謡うワインが増えてきているため、シェリーでもパゴを表記したワインが出てきています。ただ、シェリーの場合、ソレラ・システムによる熟成のため、ソレラ設定の年から現在まで、すべてのワインが単一畑の収穫で造られてきているか証明がしづらいのがちょっとネックになっています。

11:00    樽工場テバサTEVASA訪問。http://www.toneleriatevasa.com/tevasa

樽材の乾燥場から出荷まで、樽造りの全工程を見学。スペイン北部ガリシアとカンタブリアに製材所を持つ大手メーカーで、ヘレス地域の樽工場ではマッカランの樽も受注。ちょうど、シーズニングのためにゴンサレス・ビアスに預けるべく、出来上がった樽をトラックに積み込んでいるところでした。

 

 

 

 

 

 

13:00    ゴンサレス・ビアスGonzález Byass (GB)訪問。https://www.gonzalezbyass.com/

まずマリアージュの昼食から。特設ダイニングは椅子から皿、コーヒーカップまで、全てGBもしくはTio Pepe仕様。ティオ・ペペの熟成庫の最上階に設定されたレストラン・スペースの特別室で、マリアージュの昼食。

その後、電車型カートに乗ってボデガを周遊。このコースではブランデーBrandyの蒸留器も見学できます。GB社はレパントLepantoというブランデーだけはヘレスの畑で収穫されるパロミノ種のブドウを使い、ここで蒸留し、15年以上クリアデラとソレラのシステムで樽熟します。熟成は、まずティオ・ペペを熟成していた樽で12年、引き続きMatusalemマトゥサレム(30年以上熟成の甘口オロロソ)樽で3年行います。まさにヘレス産のブランデーBrandy de Jerezです。最後にテイスティングルームで基本的5タイプを試飲させていただきました。

18:00    ウリウムUrium見学。http://www.urium.es/en/

ヘレスの古い城壁が残る通りにある、V.O.R.S.を中心に、長期熟成タイプを得意とする、ごくごく小さなボデガです。この日はクラシコスUrium Classicsのシリーズのワインを樽から試飲させていただきました。オーナーのアロンソAlonso Ruiz Olivaresさんと娘のロシオRocíoさんが温かく迎えてくれます。そして樽からいろいろ飲んだ後、最後はセビリャ―ナスまで踊ることに。楽しい訪問でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ヘレスの町のタバンコTabanco「エル・パサヘEl Pasaje」で地元のフラメンコを見ながらモストを。モストは一般的には発効前の果汁ですが、シェリーの世界では酒精強化前のワインのことなので、アルコール度は12%ほどあります。モストは時期限定なので、冬にシェリーの産地を訪問なさる方はぜひお試しください。

<1月23日>

09:00    シェリー原産地呼称統制委員会で会長ベルトラン・ドメック氏による試飲。各タイプの熟成期間による成分の変化と特性を確認。その後、地元のプレスの取材を、統制委員会のボデガ・サン・ヒネスBodega San Ginésで受けました。

 

 

 

11:00    ボデガス・イダルゴ・ラ・ヒターナBodegas Hidalgo-La Gitanaの畑とボデガを見学。https://lagitana.es/

ヘレスとサンルーカルの間にある、小高い丘の上の畑「エル・クアドラドEl Cuadrado」を見学した後、さらに海に近く平坦な畑「パストラナPatrana」も見学。ここからマンサニーリャ・パサダ・パストラーナは生まれます。

ボデガはサンルーカルのバリオ・バホBarrio Bajo(低地域)と呼ばれる、もともと海が目の前まで来ていたところ。古いシェリーから試飲し、パストラナ、ラ・ヒターナで終わるコース。ラ・ヒターナの顔、ミゲルMiguel Gutierrezさんにベネンシアの技術チェックを受けました。

ビーチのレストラン街Bajo de Guíaでマリアージュの昼食。シフードリゾットが抜群のおいしさ。

 

 

 

 

17:00 フアン・ピニェロJuan Piñero訪問。http://bodegasjuanpinero.com/

同じくサンルーカルのバリオ・バホにある比較的新しい会社ですが、所有する熟成庫やソレラは100年もの。徐々に古いワインを持つ他社から買い取って、熟成ワインを増やしていっています。カパタス(ボデガで働く人)がホースのサイホンで樽からワインを出して、飲ませてくれたり、小さなボデガならではの手作業が見られました。

 

 

 

 

<1月24日>

9:30 フェニキア人の遺跡ドーニャ・ブランカYacimiento arqueológico de Doña Blanca見学。現在一般見学なし。小高い丘状になった、紀元前8世紀と紀元前3~4世紀の遺跡が見られます。かつてはこの目の前まで海が来ていたため、港としてだけでなく、要塞としての役目を果たしていたとのこと。その痕跡は周囲を囲う城壁の一部に見られますが、まだ十分の発掘が進んでいません。ブドウ搾汁場の遺跡は紀元前3~4世紀のものです。

11:00    エル・プエルトのグティエレス・コロシアGutierrez Colosía見学。http://gutierrezcolosia.com/

グアダレーテ川河口の川辺にあるため、高い湿度が保たれるというボデガ。家族経営で、この日もフアン・カルロスJuan Carlos Gutierrez Colosíaさんと母カルメンCarmenさん、娘カルメンCarmenさんが迎えてくれました。樽違いの試飲のほか、ボトルからも試飲させていただきました。娘カルメンさん手作りのポップなレストラン「ビスポウク」Bespoke https://www.facebook.com/bespokepuerto/でマリアージュの昼食をいただきました。

 

 

 

 

 

 

18:00 午後はヘレスへ戻って、ボデガス・トラディシオンBodegas Tradición訪問。http://www.bodegastradicion.es/

1998年創業だが、オーナーのリベロFamilia Ribero家のボデガの歴史は古く1650年創設のCZ-J.M.リベロにさかのぼります。「CZ」というブランドはリベロのもの。現在膨大な資料を調査中です。ワインは長期熟成タイプが主流でアニャダañada(シングルヴィンテージ)も熟成中。個人コレクションの素晴らしい絵画ギャラリーは、ワイングラスを手にしたまま見学できるのが、個人コレクションの醍醐味でしょう。

 

<1月25日>

09:30 ヘレスの駅に近い地区にあるエミリオ・ルスタウEmilio Lustau訪問。http://www.lustau.es/

2000年に19世紀建造の現ボデガを入手し、移動。整然とした美しいボデガ。ヘレスだけでなく、エル・プエルトとサンルーカルにも熟成庫を持ち、アルマセニスタ・シリーズSerie de Almacenistaも発売する、大変多くのブランドを展開するボデガ。ベルモットVermutも大人気で、白、赤のほかロゼも発売。

12:00 ペドロ・ヒメネスPedro Ximénez品種だけしか扱わない、特異なボデガ、ヒメネス・スピノラXiménez-Spínola訪問。https://www.ximenezspinola.com/es/inicio/

ペドロ・ヒメネスの畑に囲まれたボデガでは、シェリーの伝統的なペドロ・ヒメネスのほか、原産地呼称では認定されないタイプのワインもいろいろ造っています。9代目の現当主ホセ・アントニオJosé Antonio さんは自ら「ビティクルトール(ブドウ栽培者)」と名乗り、ヘレスではわずかな栽培面積しかないペドロ・ヒメネスの栽培に力を入れています。

かつて私が「ヘレスでペドロ・ヒメネスを栽培しているなんて信じられない」と言ったため、「見せてやる」と言って畑に連れていかれたのですが、それは既に14年も前のことだったそうです。確かに、その頃はまだ、ヘレスでペドロ・ヒメネスだけにこだわる彼のワインはそれほど注目されていませんでした。けれどもその情熱は今やさまざまなワインとなって、ワイン愛好家の心に響いています。この日いただいたタパスとの相性も抜群でした。

 ここで、統制委員会の事務局長セサル・サルダーニャCésar Saldaña氏からシェリー・アカデミー2019修了証書の授与がありました。

 

 

 

20:00 最後の訪問はヘレスの町中の小さなボデガ、ファウスティーノ・ゴンサレスFaustino González。https://bodegasfaustinogonzalez.com/

自社畑のブドウで、樽発酵して造るシェリーは、ごくごく少量生産。ハイメJaime Gonzálezさんが丹精込めて造るワインは、抜群のおいしさです。ボデガはフラメンコ関係者が多いサン・ミゲル地区の一角で、今も昔のボデガ街の雰囲気が残るクルス・ビエハCruz Vieja地区にあるため、ブランド名は「クルス・ビエハ」。パティオでシェリーを飲みながら休憩した後は、近所のバルで、地元の人たちに交じって、タパスとシェリーを楽しみました。

<1月26日>

05:00 ホテル発、ヘレス空港へ。中4日の短い研修旅行は終わり、マドリッド経由で一路日本へ。帰国は1月27日10:45成田着。

来年も新しい訪問先を加えながら「シェリー・アカデミー」を企画します。1月下旬実施予定です。ぜひご参加ください。

 

 

 

 

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