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マドリッドフシオン&エノフシオン2019 MadridFusión y Enofusión 2019

<マドリッドフシオンMadridFusión>

毎年1月末にマドリッドで開催されるガストロノミーフェア「マドリッドフシオン」。今年は1月28、29、30の3日間で、13,000人以上の来場者、2,000人以上のプレゼンテーション参加者、122名のプレゼンター、200社の出展がありました。また世界中から850名近いプレスが来場するということもあり、スペイン国内外の著名なレストランのプレゼンテーションやコンクールだけでなく、様々な発表の場にもなっていました。

29日には、しばらく姿を見せなかったエルブジEl Bulliのフェラン・アドリアFerran Adriàが「エルブジ1846」構想を発表。2020年2月に「エルブジ」をリニューアルオープンするが、今度はレストランではなく、ラボラトリーと料理革命センターとして機能するとのこと。1846はオート・キュイジーヌのパイオニア、オーギュスト・エスコフィエの生まれた年です。

30日にはエル・セレール・デ・カン・ロカEl Celler de Can Rocaのソムリエ、ジョセップ・ロカJosep Rocaがヘレスのフラメンコ・ギタリストのディエゴ・デル・モラオDiego del Moraoとシェリーのメーカー、ゴンサレス・ビアスGonzález Byassの醸造家アントニアオ・フローレスAntonio Floresとともに、「ヘレス・エントレベラオJerez Entreverao」という、シェリーのタイプ別の各ブランドとフラメンコのパロ(曲のタイプ)のマリアージュをテーマにしたドキュメンタル・フィルムを発表しました。

https://youtu.be/s2VMwBYhqeE

 

 

<エノフシオンEnofusión> https://www.enofusion.com/topwinespain/

エノフシオンはマドリッドフシオンの中のワイン部門といった感じですが、運営は独立しています。

今年は新しい企画として「トップ・ワイン・スペインTop Wine Spain」が登場。長年ワイン評論家として活躍し、スペイン・ガストロノミー賞を受賞しているカルロス・デルガドCarlos Delgado氏がコミッショナーとなり、厳選した37のボデガを集めたコーナーです。選択基準は、畑の風景を反映し、地場品種の純粋な力、技術と知識によってもたらされるテロワールを表現していること。選ばれたボデガには21世紀に誕生した新しい小さなところもあれば、19世紀創業の長い伝統を持つ大手メーカーもあります。けれども、いずれも、はっきりした特性を持ったワイン造りをしています。

資料には、各ボデガを代表する1本が掲載されていました。例えば、今回選ばれたボデガの中で一番古い、1858年創業のマルケス・デ・リスカルMarqués de Riscal。そのワインは、リオハRiojaに新時代をもたらしたと言われる「バロン・デ・チレルBarón de Chirel」です。リオハの伝統的な繊細でエレガントなスタイルではなく、樹齢の高い樹を使った凝縮感のあるタイプを高い品質で表現したワインです。DOP(保護原産地呼称)リオハRiojaからは11社も選ばれているのは、さすがに伝統と革新を重ね、いまでもトップクラスのワインを造り続けている産地ならではといえます。

 

同じく知名度の高いDOPリベラ・デル・ドゥエロRibera del Dueroからも11社選ばれています。ペレス・パスクアスやで伝統的と言ってもいいペドロサ新しくは、同産地でアアルトAalto、DOPルエダRuedaでオシアンOssianを立ち上げたハビエル・サッカニーニが新たに手掛けたセイ・ソロSei Solo も出展。

DOPリベイラ・サクラからはアデガス・モウレAdegas Moureが地場品種だけをブレンドして造ったワイン、「アバディア・ダ・コバAbadía da Cova1124」が選ばれ、マヨルカ島のアニマ・ネグラÀnima Negraは地場品種カリェットCalletをフィーチャーした「アンÀn」、DOPイェクラYecla のボデガス・カシターニョBodegas Castaño からは地場品種のモナストレルとガルナチャ・ティントレラのワイン、「カサ・デ・ラ・セラCasa de la Cera」、そしてDOPプリオラトからは、テロワールを表現したワインで、この産地を世界に認知させたボデガのひとつ、クロス・モガドールClos Mogador。

IGPカスティーリャ・イ・レオンCastilla y León のアバディア・レトゥエルタAbadía Retuertaからは、このセレクションのコンセプトのひとつ“地場品種”から外れたプティ・ヴェルド100%が選出されていますが、このボデガのスタイル。

その他、7つのDOPから質の高い、個性あるワインが出展されていました。「トップ・ワイン」と銘打っているだけあって、現代スペインワインの最先端が見られる企画でした。

<セミナー>

エノフシオンは毎年セミナーのテーマに興味深いものがあります。

今年参加したのは以下の3つでした。

  1. 1. 偉大なポートの熟成 El envejecimiento de los grandes Oportos

1692年創業のポートのメーカー「テイラーTaylor’s」のマーケティング主任のニック・ヒースNick Heathさんによるテイスティング。

・ヴィンテージは50,000リットル入りの樽で22か月熟成後ボトリング。シングルキンタ・ヴィンテージ2008年(キンタ・デ・ヴァルジェラスQuinta de Vargellas)とクラシック・ヴィンテージ1985年。

・トウニーは630リットル入りの樽で酸化熟成。10年、30年、コリェイタ1968を試飲。68年は縁に緑色のトーンが見えてきて、古さを感じさせられます。樽熟によって水分とアルコール分が蒸発し、酸度が高くなるため、甘さをカバーしてくれるとのこと。

2. ティオ・ペペ・パルマ・コレクション2018 Colección Tio Pepe Finot Palmas 2018

シェリーの代名詞ともいえるゴンサレス・ビアス社のティオ・ペペの、時の経過による変化を味わえるシリーズです。プレゼターは、ティオ・ペペの熟成庫の上で生まれたというマスター・ブレンダーのアントニオ・フローレスさん。

パルマというのはフィノの中でも特別にクリーンで洗練度が高く繊細なものです。このコレクション用に選ばれた樽の中から、さらに2018年出荷用にはこれという樽が選ばれて、ボトリングされます。ウナ(1)パルマは6年熟成で酵母の膜はしっかり張っています。ドス(2)パルマスは8年熟成で、酵母の膜のもとで熟成されていますが、かすかに酸化が加わってきています。トレス(3)パルマスは10年熟成。酵母はまだ生きていますが、酸化も始まっていて、フィノ・アモンティリャードと呼ばれる状態です。クアトロ(4)パルマスは、時を経て酵母が消え、酸化熟成が加わったもので、平均熟成期間53年。高貴な出の紳士といった雰囲気の香り高いアモンティリャードです。

酵母は自然に発生するものなので、年ごとの気候条件が影響します。そのため、毎年このコレクションは樽の中のワインの状況をテイスティングでチェックし、どれを出荷するか決められています。

 

  1. 3. バルデオラスは赤もいいLos tintos alternativos de Valdeorras

ガリシア州の東の端にあるDOPバルデオラス。ガリシアということからか、地場品種のゴデーリョの白ワインのイメージが強いようです。けれどもメンシア、ソウソン、ブランセリャオといった黒品種でも素晴らしい赤ワインが造られています。そこで今回は統制委員会が赤ワインのプレゼンテーションを行いました。

試飲したワインはメレンサオ:Valteiro 2015, Valdesil、ブランセリャオ: A Costiña 2015, Alan、メンシア:Lagar do Cigur 2015, Melillas e FillosとAvancia Cuveé 2016, Avanci、メンシア+ソウソン+ブランセリャオ:Trebón 2015, Adega da Pinguela、ソウソン:Viñaredo Souson 2014, Santa Marta、ガルナチャ・ティントレラ:A Chaira Do Ramiriño 2016, SampayoloとAlan Escada 2016, Alan。

ガリシア州の赤にも注目していきたいですね。

その他エノフシオンではエノヴビシオンEnovisiónという飲食業界関係者向けの様々なテーマによるフォーラムが開催されました。

 

 

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