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ルエダ訪問 Visita a Rueda II 

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今日の最初の訪問は協同組合組のアグリコラ・カステリャナAgricola Castellana。通称クアトロ・ラヤスCuatro Rayas1935年創業。栽培農家300軒を擁するルエダ最大のボデガで、2番目に大きいボデガの3倍も生産しているとか。ルエダで唯一の全自動のボトリングラインでは、ルエダの瓶詰めワインの20%以上を生産しているそうです。

 総栽培面積は2100ha以上あり、主要品種はベルデホ。畑は垣根づくり、株づくりだったものを垣根に仕立て直してあるもの、株づくりの3種あります。畑担当のホセJosé Martín del Campoさんと松林地帯を抜けて株づくりの畑に向かうと、林というより森と言ってもういいくらい広大な地域に松が見られます。畑の向こうにもこんもりと松林がありました。石ころの畑にかがみこんだような低い、がっしりとした、まさに株という風情のベルデホの樹がきれいに並んでいます。この畑のベルデホと、1ha1000本しか植わっていないという、フィロキセラの害にあっていない100年以上の畑で栽培されるベルデホとでつくるワインが、「クアトロ・ラヤス・ビニェドス・センテナリオスCuatro Rayas Viñedos Centenarios」です。ミントのような香りを持つ、繊細でソフトでエレガントながら、しっかりしたボリューム感があるのは、100年物の畑の力でしょう。創業75周年記念に、醸造家アンヘル・カリェホÁngel Calleja Martínezの”カプリチョCapricho”、つまり気まぐれでつくられたワインと言われています。

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 さらに、このボデガは、数あるブランド、数あるタイプの製品の中で、ルエダならではの伝統的なワインを持っています。それが「61 Solera Seleccionada」。ドラドDoradoといわれるワインです。今や伝説的になってしまったシェリーのルエダ版といった感じのワインです。ルエダは産膜酵母が自然に発生する、スペインでも数少ない地域のひとつなのです。前出のパロミノ・フィノ種を50%、あとの50%はベルデホを使用し、クリアデラとソレラのシステムで熟成します。ドラドを維持できるのは協同組合ならではかもしれません。2年に1度しかボトリングしないという貴重()品、なのですが、これは近所の主婦が料理用に買って行って、実は料理しながら飲んでもいるとか。フィノ・アモンティリャードのような、辛口ですが、ソフトでやさしい感じでした。

 

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この日2番目のボデガは、ビダル・ソブレチェロVidal Soblecheroという看板もない小さなボデガです。ぶどう栽培農家だったクラウデュオ・ビダル・ソブレチェロ一家が、ボデガを始めたのは最近です。自分たちのぶどうで、畑の個性を表現した自分たちのワインをつくろうという意図のもとに、アリシアとビダルの兄弟がぶどう栽培から販売まで自分たちの手で行っています。所有する畑は42ha。全て年代物で株づくりの畑は、事実上有機栽培で、小さな区画に分かれている畑ごとにワインがあります。ベルデホ100%のシリーズは「パゴ・ビリャベンディミアVilla Vendimia」といって、そのなかにフィンカ・エル・アルトFinca El Alto、フィンカ・ブエナ・ビスタBuena
Vista
、フィンカ・マテアMatea、フィンカ・エスクリビエンテEscribienteがあり、ブエナ・ビスタは砂質の土壌で香りが高くやわらかになるとか、マテアは粘土質でアニス香やミネラル感があってしっかりしている等、それぞれの特徴があるのが魅力。発酵にはぶどうそのものの酵母を使っています。

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 ここで見逃せないのはアイスワインvino de hielo。本当に自然に凍ったぶどうを使うアイスワインです。ボデガの入口に株づくりの畑の一角があり、実に白い袋がかけてあります。これが、気温が氷点下になるのを待って収穫するベルデホの畑でした。ここは零下12℃にもなるそうです。寒暖の差が激しいカスティーリャ・イ・レオン、そしてルエダならではの特別なワインです。

 

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3番目のボデガはフェリックス・ロレンソ・カチャソFelix Lorenzo Cachazo60年以上前に設立されたボデガで、原産地呼称の認定に際し統制委員会を設立した6社のボデガの一つでもあります。迎えてくれたのはオーナー一家の娘、アンヘラ・ロレンソÁngela Lorenzo Herassとお母さん。アンヘラは三代目で、彼女もワインつくりに加わっています。「カラスビーニャスCarrasviñas」のベルデホは優しい香りで辛口感が強く、「マニアManía」のベルデホは香りも味も華やか。マニアは若者向けということで、蝶のデザインが楽し気です。お昼は落ち着いた風味のカラスビーニャスでいただきました。

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 この日の最後はマルケス・デ・リスカルMarqués de Riscal。正式名はHerederos del Marqués de Riscal。”リスカル侯爵の後継者たち”という、1858年創設のリオハの大御所的ボデガです。赤ワインの産地で素晴らしいワインをつくっていたこのボデガは、白でも品質の高いワインをつくりたいと、70年代初めから適地を探した結果、72年、ルエダを選択したのです。ルエダが前出のドラドで知られていた時代でした。マルケス・デ・リスカルはベルデホの力を引き出しただけでなく、74年に新たにソーヴィニヨン・ブランをルエダに導入し、ルエダを上質白ワインの産地として世に出し、ルエダの原産地呼称認定にも大きな力になりました。

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 現在は自社畑200ha以上を所有し、栽培者の契約畑の面積はそれを上回る、カスティーリャ・イ・レオン州でも最大級のボデガの一つに挙げられています。という割には、そしてリオハの目を見張るような斬新なデザインのボデガから推しても、ルエダのボデガはかなりシンプルで機能的でした。ワインもベルデホはベルデホらしく、ソーヴィニヨン・ブランはソーヴィニヨン・ブランらしく、それぞれの特徴を表したスッキリ、きれいなワインでした。

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