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カナリア諸島訪問記 REPORTAJE DE LAS VISITAS DE BODEGAS EN LAS ISLAS CANARIAS 3/4

4日目:ランサローテ

 ランサローテといえば、真っ黒な大地に月面クレーターのようなブドウ畑。1730~1736年のティマンファヤ山の大爆発で溶岩と火山灰に覆われたため、以前は作物が植えられる土地だったのが一変しました。それでも何か作物を植えよう、ということで選ばれたのがブドウでした。ただ、植えるにあたって穴を掘らなければなりませんでした。それは火山灰を被る前に作物が植えられていた豊かな土壌にブドウを根付かせるためです。火山灰が浅いとことは大きな穴を掘る必要はありませんが、深いところは2~3mあるため、直径が4mとか6mにも至る、巨大なアリ地獄のような穴が掘られます。これをオーヨHoyo(単に穴という意味ですが)と呼んでいます。風が強いため、風が吹いてくる方向にだけ、背の低い防風石壁が作られています。これをSocoといいます。この大掛かりな装備をされたオーヨの中に植えられるブドウの樹は1本だけです。

火山灰の層が薄い場合は、1本ごとにオーヨを作る必要はありません。ただ、春夏は貿易風が強く吹くので、防風壁が必要なため、長い石の壁を作り、それに沿って植えていきます。この方式をイレラHilera(列の意味)といいます。樹何本か毎に境の石壁があるサンハZanjaというスタイルもあります。見たところ、こちらの方がイレラより深めに掘って植えられています。

黒い土、ピコンPicónは軽石状で、スポンジのように夜露や海から吹く湿った空気の水分を蓄えることができます。そのため年間降水量がたとえ150㎜であってもブドウは生きていくことができるのです。

 

最初の訪問は「ロス・ベルメホスLos Bermejos」です。

ボデガの前の畑には線状に石の塀が何列も作られていて、ブドウの樹が並んで植えられています。イレラHileraです。平坦な畑で、何列も何列も並んでいます。樹ごとに特に穴が掘ってあるという感じではありません。1haに800本ほど植えてあるそうです。

ボデガには古いラガール(ブドウ踏み場)も展示してありましたが、設備は最新で、きれいなモダンなタイプのワインを造っています。ブドウ畑が見えるテラスで白はマルバシアとディエゴ、赤はマセラシオン・カルボニックのリスタン・ネグロを試飲させていただきました。ここはスパークリングも造っています。ボトルは肩が丸く、下がすぼまった形が独特です。

 

次は「エル・グリフォEl Grifo」。https://elgrifo.com/

1775年創業で、カナリア諸島では最も古い、そしてスペインでも古いボデガの一つです。エル・グリフォというのは一般的なスペイン語では水道の蛇口のことですが、元の意味は水のある所を示しているとのこと。そしてボデガのロゴに使われている絵はギリシャ神話に出てくる、鷲(または鷹)の翼と上半身、ライオンの下半身をもつ伝説上の生物、グリフォ(西)=グリフォン(仏)、グリュプス(ギリシャ)です。

ボデガ街道もしくは“月面クレーター畑”街道と言ってもいい通りに面してグリフォの看板が立っています。その下は溶岩が流れて固まった跡がくっきり。後ろの真っ白なボデガの建物とのコントラストが、まさにランサローテならではの景観です。

「エル・グリフォ」は古いだけあって、ここにしかないチャボコChabocoという大穴をいくつも持っています。1730~1736年の火山の大爆発の後、果樹を植えるために掘った深さ2mはあるであろう巨大な穴で、石壁で囲った地下の要塞のようです。モスカテル・デ・アレハンドリアMoscatel de Alejandríaの巨木が今も実を付けています。

ボデガの周りの畑はサンハ式です。樹は少し穴を掘った感じの植え方をされえていました。イレラ式とオーヨ式の畑はボデガから少し離れたところにあるそうです。

ここではマルバシアのスパークリング、ヤングワイン、シュールリ、モスカテル(チャボコに生えている200年を超す樹)のオレンジワイン、リスタン・ネグロとシラーの赤、リスタン・ネグロを天日干しして造る甘口ワインをソレラとクリアデラで熟成したもの、以上合計6タイプを試飲。

他に興味があったのは、「カナリCanari」というワイン。“17世紀にカナリとして知られていたワインの末裔“とのこと。マルバシア・ボルカニコMalvasía Volcánicaを天日干しし、発酵はアルコール添加で止め、500ℓのオーク樽で酸化熟成させた1956,1970,1997の3ビンテージをブレンドしたものです。

他に、マルバシア・ボルカニカの「冬摘みVendimia de Invierno」というワインも造っています。これは真夏に剪定し、真冬に収穫する実を使っています。真夏に剪定することにより、樹の成育サイクルを変えるのだそうです。真冬でも20℃ほどあるランサローテならではの発想のワインかもしれませんが、気候変動も影響しているとのことです。

 

ランサローテの最後はオロタバの「マルサナガ・エレメンタレス」のクラウディオさんの「ビニャドーレス」の仲間、エイモンEamonnさんの「ボデガス・コオンブリーリョBodegas Cohombrillo」です。

ずり落ちそうなほどの、かなりな傾斜地に畑がありました。形式はイレラですが、一見蛇が何匹も斜面をうねりながら下っているような景観です。土地はピコンというより、溶岩が固まったものが細かく砕かれたような感じでした。そのため余計に足場が悪く、ここの畑仕事は大変そうです。

ここもナチュラルなワインで、飲みやすく、おいしかったです。

樽に入れたワインにフロール(産膜酵母)が自然に発生しているとのことで、見せていただきました。シェリーのフィノのフロールように分厚くはありませんが、白い膜が張っています。面白くなりそうなワインです。

 

ここまで肝心のオーヨを見ていませんでした。エイモンさんに教えていただいて、行ってみると、先ほどのボデガ街道ですが、人影が見える所がありました。「ボデガス・ストラトゥスBodegas Stratus」です。観光客らしき人が何人もボデガの前で写真を撮っています。勝手に畑に入ってよいようです。前回はちゃんと訪問したのですが、「畑はそこにあるから勝手に見てきて」と言われたのを思い出しました。なので、オーヨに入って、記念撮影してきました。

 

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