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VEGA SICILIA I ベガ・シシリアのテイスティング①


IMG_6707.JPGスペインの特別なワイン、ベガ・シシリア。その伝統の重みと品格は他もどんなスペイン・ワインとも一線を画しているのではないかと思います。

3月17日、ベガ・シシリアの輸入元、ミリオン商事さんからご招待いただいて、醸造家ハビエル・アウサスさんによるセミナーに参加しました。

Xavier Ausàsハビエル・アウサスさんは1990年にベガ・シシリアに入り、主にAliónアリオンつくりに携わってきました。彼が始めて総指揮をとってつくったVega Siciliaベガ・シシリア98年ヴィンテージでした。

 

TEMPRANILLO テンプラニーリョ


IMG_6716.JPGこの日の最初のテイスティングのテーマはテンプラニーリョを使った4本のワインの比較。DOトロのピンティア2006年と2005年、DOリベラ・デル・ドゥエロのアリオン2005年と2004年でした。

Pintiaピンティアはベガ・シシリア社が1997年にDOトロに買った50ヘクタールの接木なしの古い畑でつくり始めました。けれども2000年までは試作期間。2001年が最初のヴィンテージになりました。「トロは二重に暑い地域です。」とハビエルさんがいうのは、太陽が暑いということと、地表が石ころで覆われているため熱が保持されるということです。けれども過熟香は避け、フレッシュな香りを抽出する努力をしています。収穫されたぶどうは冷却槽で5℃まで温度を下げ、5~6日間発酵させずにマセレーションすることによって香りを保ちます。その後発酵し、樽に移します。マロラクティック発酵は全て樽で行い、樽熟はフレンチオーク70%、アメリカンオーク30%の新樽で12~14ヶ月行います。瓶熟は1年。トロでは年による収穫の変化はあまりないとのことでしたが、2006年と2005年はかなり違う印象です。その理由としては1年瓶熟が長い分、落ち着いていること、天候の条件が大変違ったことが挙げられました。そして「ピンティアは2001年から2009年まで、ずっとエレガントさを求めて進化してきたので、その成果が出ているかもしれません。」トロのワインは泥臭いところがあるものですが、それをエレガントに仕立てるには年月がかかっているのです。

Aliónはベガ・シシリア社がDOリベラ・デル・ドゥエロじゅうで最もモダンでエレガントなワインをつくろうという意図のもとに出来上がったワインです。「Pintiaを男性的というならAliónは女性的でエレガントといえます。この地域で昔からテンプラニーリョをティント・フィノと呼ぶのはフィノ、つまり繊細なワインを産み出すぶどうであることを知っていたからではないかと思います」とハビエルさん。土壌は石灰質。低温マセレーションの行程を通さず発酵させ、マロラクティック発酵はステンレスタンクで行い、フレンチオークの新樽で14~16ヶ月熟成し、瓶熟を2年行います。リベラ・デル・ドゥエロではトロと違って、天候の違いがワインに大きく反映されます。2004年は醸造家が何もしなくてもすばらしいワインになる恵まれた年ということで、確かにまろやかなまとまりの良いワインでした。けれども2005年は夏の暑さが厳しく、大変難しい年だったということで、ワインはエレガントななかに芯の強さが感じられました。Aliónにはセカンドがないため、満足のいかないワインは蒸留してしまいます。そのためこの年は生産量が7%減ったそうです。悪い年にどれだけ良いワインをつくれるかで醸造家の技量が問われます。

同じテンプラニーリョという品種で同じ2005年につくられたPintiaAliónを比べてみると、あきらかにPintiaには独特の荒っぽさが感じられ、Aliónはソフトでなめらかでした。産地の違いは大きく影響するものです。

(続く)

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