スペインを代表する上質ワインをつくり続けてきたベガ・シシリア社の醸造家Xavier Ausàs さんの来日に際して開催されたゴージャスかつ、大変充実したテイスティング。ここからはランチをいただきながらの試飲です。
TOKAJI トカイ
ベガ・シシリア社がハンガリーのトカイに畑を買ったのは1993年のことでした。トカイは甘口ワインの産地として有名ですが、ここであえて辛口で肩の凝らない白ワインを、ということで出来たのがOremus Tokaji Dry Mandulasです。Mandurasはハンガリーが400年前に畑のクラス認定を始めたときからあった畑の名前で、ベガ・シシリア社はプルミエ・グラン・クリュ認定畑を120ヘクタール所有しています。
フルミント種100%でつくられた1999年ヴィンテージのワインは金のように艶のある色、白い花やエキゾチックなフルーツの香り、辛口でボリューム感があります。醸造家Xavier Ausàs さんは「この地域はミネラル分が多いので難しいですが、ブルゴーニュ・タイプのエレガントなワインに仕上げています」と。ハンガリーの森のオークを買って3年間乾燥させ、ベガ・シシリアの樽職人を招いて、現地で指導して作らせた樽を使って発酵させ、8ヶ月バトナージュしながら熟成し、その後瓶熟1年を経たという、大変な手間と時間をかけたワインです。
TINTO VALBUENA 5º ティント・バルブエナ・キント
まず、ValbuenaバルブエナはVega Sicilia Unicoベガ・シシリア・ウニコのセカンドではないということ。Unicoと同じ畑のぶどうでつくったワインを樽と瓶で5年熟成したものがValbuenaです。2004年と1999年を試しました。ティント・フィノを主体にメルローとマルベックをブレンドしたものです。2004年は大変良いヴィンテージだったのに対し99年は難しい年でした。収穫が始まってから雨が降ったため待ち、さらに豪雨にみまわれ、収穫の1/3を失いました。けれども出来たワインは素晴らしいものでした。「悪い年でも良いワインをつくれるのが良いワイナリーだ。」とXavierさん。Valbuenaは10年目ぐらいが飲み頃ということで、99年は今、04年は2014年頃がいいそうです。99年は色も風味も落ち着いています。
そしてUnico。Valbuenaと同じ1999年ヴィンテージです。けれどもValbuenaよりずっと活き活きした色合いをしています。「99年はエレガントでフェメニンで複雑さがあります」とXavierさん。Unicoには2つのスタイルがあるそうです。ひとつはフェメニンながらも男性的な面を持つもの。もうひとつは複雑さがあり、繊細で、フェメニンなエレガントさを持つもの。後者のほうがUnicoらしいスタイルで、99年はこちらに属します。自然に飲めてしまうおいしさは本当に良いワインだからこそでしょう。
TOKAJI ASZU トカイ・アスー
最後はOremus Tokaji Aszu 5 Puttonyos 1999。アスーは極甘口という意味だそうです。貴腐ぶどうのペーストを5杯(プットニョシュ)辛口ワインに加えて熟成した甘口ワインです。きれいな酸味が甘さを引き締めた、凛とした極上のデザートワインでした。
Vega Sicilia社は何回か訪問したことがありますが、いつもその丁寧で隙のない仕事ぶりに感心します。だからこそ、Xavierさんの言葉を借りると「bien educado(立派な教育を受けた、礼儀正しいといった意味)で、エレガントなワインができるのでしょう。