BLOG

ルエダ訪問 Visita a Rueda III 

1024()

 

IMG_3676.JPG

この日は先ずボデガス・ナイアBodegas Naiaへ。2002年創業という新しいボデガですが、当初から「偉大なワインをつくろう」という意図のもとに、古い樹の畑を選んで手に入れてきました。現在所有する21haあまりの畑にはフィロキセラ禍を免れた100年以上の畑も含まれています。

 醸造家はクリスティーナ・ボッシュCristina Boschですが、設立当初彼女の指導をしたのはエウロヒオ・カリェハEulogio Calleja。前出のクアトロ・ラヤスの醸造家アンヘルとは兄弟で、どちらもスペインでは著名な醸造家です。

  ベルデホの株づくりの古い畑を見学。ここも一面石ころです。幹は岩のごとくがっちり太いわりに、小さな実はソフトでジューシーでした。

IMG_3690.JPG

 「ナイアNaia」にも「ナイアデスNáiades」にも、こういった古い樹の実を使います。特に「Náiades」は砂地の畑で栽培された接ぎ木なしの100年もののぶどうも使用し、225ℓから500600ℓまで、様々な樽で発酵させ、8か月、澱とともに熟成させたものです。つややかでふくよかで、熟れたアプリコットやオレンジの蜜のような香り、草の葉のような香り、そして最後に感じる苦み。ベルデホの力が示されるワインでした。

 

 

IMG_3692.JPG

次はパゴス・デル・レイPagos del Rey。王様のぶどう畑という名です。カスティーリャ・ラ・マンチャ州の原産地呼称バルデペーニャスに本拠を置く、スペイン最大のボデガ、フェリックス・ソリス社が2002年に始めたプロジェクトがパゴス・デ・レイです。ラ・マンチャではなく北部のワイン産地であるリベラ・デル・ドゥエロ、トロ、リオハ、そしてルエダにボデガを持ち、パゴ・デル・レイの名で各地の特徴あるワインを生産しています。ルエダのボデガは、2005年に購入したもので、丘の上にそびえる壮大な建物が圧巻です。ボデガの設備は当然ながら最新のコンピューター制御方式で、収穫もほとんど機械で行うそうです。貯蔵タンクの容量は2万ℓから10万ℓのものまで各種あり、年産400万ℓ。さすがフェリックス・ソリスです。

IMG_3694.JPG

 ワインは業務店向けの「アナリビアAnalivia」と一般消費者向けの「ブルーメBlume」があります。アナリビアにはベルデホ、ソーヴィニヨン・ブラン、ルエダがあります。ルエダというのはブレンドタイプでベルデホを50%以上使うことが義務付けられていて、アナリビア・ルエダの場合は、ベルデホとビウラが使われています。ボディがしっかりしていて、食事に合わせるにはよさそうなワインでした。

 

 

IMG_3726.JPG

3番目のボデガはボデガス・メナデBodegas Menade。少し前までシティオス・デ・ボデガと名乗っていたボデガですが、醸造家のリチャード・サンスRichard Sanzは、今後メナデで統一し、エコに徹した高品質ワインつくりに専念すると語っていました。そのためボトルも軽い素材にし、栓はコルクに戻すそうです。彼はサンス家の6代目。父親のアントニオ・サンスAntonio Sanzのボデガから独立して、2005年、兄マルコと妹アレハンドラとともに独自のボデガを立ち上げました。醸造所は畑のまん中にあるモダンな建物です。自慢の足踏み式ラガールも2基備え、発酵にはぶどうが持つ自然な酵母を使っています。

IMG_3713.JPG

Menade Verdejo 2011」は、白ワインですが、果汁だけで発酵させるのではなく、赤ワインのように実全体を一緒に発酵させたワインを5%含んだもの。香り豊かなタイプではないですが、酸がしっかりした、フレッシュさのあるワインでした。父のアントニオは前のボデガを売って引退したはずなのですが、もう舞い戻って「アントニオ・サンスAntonio Sanz」というマイ・レーベルでワインつくりを始めています。

 

 

IMG_3737.JPG

最後のボデガはセゴビアにあるオシアンOSSIANです。セゴビアの名は今回のルエダ訪問中に何度も聞いていました。あの、”土壌が砂質なのでフィロキセラの害を受けなかったので接ぎ木をしていないぶどうが植わっている”という地域です。ここでワインをつくろうと決めたのはハビエル・サッカニニJavier Zaccagniniです。原産地呼称リベラ・デル・ドゥエロの元会長で、著名な醸造家マリアノ・ガルシアMariano Garcíaとともに「アアルトAalto」を立ち上げた人です。ハビエルはセゴビア県のニエバスというルエダ認定地域の南西の端に、樹齢100200年という、素晴らしいベルデホの畑を見つけました。現在17haは所有し、13haは栽培農家と契約しています。ニエバスはルエダの中でも標高の高い地域で、900m前後あります。ここで20年間エコな畑を守ってきたのがイスマエル・ゴサロIsmael Gozaloです。彼は有機農業ではなく”論理的農業”と表現しています。自然に即した扱いだからです。彼の、接ぎ木なしで樹齢200年のぶどうの力をワインで表現したいという気持ちがハビエルの意欲とひとつになってできたのがオシアンのプロジェクトでした。ワインつくりはブルゴーニュで白をつくってきた醸造家、ピエール・ミルマンPierre Millemanの指導を受け、ブルゴーニュ・スタイルにしています。

IMG_3753.JPG

 最後に、この地域には、スペインではプリオラト特有の土壌として知られるスレート状の土壌もあり、ミネラル感のあるワインができるそうです。

 

 歴史あるボデガ、新進気鋭のボデガ、それぞれが、独自のベルデホの味を求めてワインつくりに励んでいます。今、ベルデホはある意味、”ブーム”です。原産地呼称統制委員会の海外プロモーション担当のクリスティーナ・マンサノによると、今年は干ばつでかなり収穫量は減っているはずだが、栽培面積がすごく増えているので、結局、ルエダとしては、収穫量は前年より増えたとのこと。実際に、白品種の場合、1997年と2011年を比べると、2倍に増えています。ブームに関係なく、おいしい白ワインは常に大歓迎です。

 

関連記事

PAGE TOP