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ウティエル・レケーナ:ボバルの地 Utiel-Requena:Tierra de Bobal (後半)

DO UR (ウティエル・レケーナ)訪問記の後半です。引き続き地場品種ボバルの地を探索。

9月22日(金)

この日はまずレケーナにあるブドウ栽培および醸造学局Estación de Viticultura y Enologíaとブドウ栽培および醸造学技術研究所 Instituto Tecnológico de Viticultura y Enologíaを訪問しました。農業事務所長のマリア・テレサ・ヨレンテMaria Teresa Llorenteさん、ブドウ栽培および醸造学部の部長スサナ・ペドロンSusana Pedrónさんと実験室上級研究員のカルメン・ルイサ・モンソCarmen Luisa Monzóさんに案内していただき、この地域のワイン産業の発展に寄与してきた技術研究開発部門を見せていただきました。ここでは統制委員会がDO認可シールを発行するワインの分析検査も行っています。

また地元だけではなくスペイン全体のワイン産業の未来を背負う新しい技術者を輩出するブドウ栽培および醸造学専門学校Escuela de Viticultura i Enología “Felix Jiménez” では校長のアゲダ・セラノさん、醸造学の教授ラファエル・アポリナルRafael Apolinarさんにもお話を伺うことができました。ここでは学生さんたちが実習用醸造設備からサンプルを引き出して計測しているところなどを見学しました。

 次はボデガス・ビベBodegas Vibe https://www.bodegasvibe.com/ を訪問。表の通りにある看板はボデガ名が切り抜きになっています。そこにちょうど太陽の光が当たって、下の土にボデガの名前がはっきり映っているのがステキでした。別荘のような寛いだ雰囲気のテイスティング・スペースで、経営者のラウル・ビセンテ・ベスハクRául Vicente Bezjakさん、醸造家のフアン・カルロス・ガルシアJuan Carlos García さんとまず試飲をしてから畑を見学に行きました。ここはタルダナという地場品種の白とボバルのワインが圧倒的な主要製品です。タルダナは熟成する時期が遅い品種ですが、ちょうど良い具合に熟してきている畑を見ることができました。

 続いてボデガス・ノドゥスBodegas Nodusです。遠くを山に囲まれた広いブドウ畑の中に、モダンでシャープな建物が建っているのがオシャレです。遠景に山がある景色というのはDOウティエル・レケーナの特徴の一つです。どの畑でも視線を上げるとその先には山があります。緑が多いのも特徴でしょう。

ここではまず輸出部長のバラス・バジBalázs Bagiさんと畑を見学し、オーナーのアドルフォ・デ・ラ・エラスAdolfo de las Erasさんも交えて併設のレストランでお昼をいただきました。地元料理でとてもおいしかったです。テイスティグは最後に総ガラス張りのテイスティングルームで。

この日はボデガス・ノドゥスのホテルに宿泊することになっていましたが、まだ早いので、もう一度ベラ・デ・エステナスへ。ちょうど、この日の収穫作業が一段落したところで、フェリックスさんが、マロラクティック発酵中のシャルドネとか、樽熟中のボバルとか、微妙な状態のワインをテイスティングさせてくださいました。

ボデガス・ノドゥスの場合、ボデガはスーパーモダンですが、ホテルは田舎家風で、ほっこりしていました。翌朝ブドウ畑を散歩していると、鶏に遭遇。この卵もレストランで使っているのでしょう。

 

9月23日(土

今日は週末なのでボデガ見学はお休みです。この日から2晩はレケーナの旧市街の中央広場にあるホテル・ドニャ・アニータHotel Doña Anitaに泊まるので、レケーナに移動します。けれどもその前に、迎えに来てくれた統制委員会のカルミナさんが、彼女の一家が総出で行うブドウの収穫に連れていってくださいました。摘むのはもちろんボバルの古木の実です。房は小さいのですが、ずっしり重い、存在感のあるブドウです。炎天下、果てしなく続くブドウ畑で、腰をかがめた姿勢で長時間働くのはかなりな重労働です。

 しばし収穫体験をした後、レケーナの町に向かいました。ここもウティエルと同じように町の地下には巨大なティナハを納めた洞窟が縦横無尽に走っていますが、ここでは博物館「町の洞窟Cuevas de la Villa」として公開しています。それを考古学者のスーシさんが案内してくださいました。いかにワイン造りが盛んだったかがうかがえます。続いて、彼女の仕事場でもある考古学博物館も見学させていただきました。掘り出された壺や食器などが展示されています。

この日の夜はレケーナの旧市街のお祭り、白い夜La Noche en Blancoでした。博物館や教会など公的な施設が02:00まで無料開放され、広場では(なぜか)フラメンコのライブがありました。

 

9月24日(日)

午前中は旧市街を散策。地図を手に、歴史を物語る教会や城壁の位置を確認しながら歩きました。午後はスーシさんとレケーナの町の近くにあるゴージャスな佇まいのボデガを外から眺めたり、小川の流れる田園風景の中を散歩したり。最後は町のバルで地元の人たちと一緒にワインを飲みながらグルメ・ハンバーガーを食べて終わりました。

 

9月25日(月)

この日は朝からボデガ訪問です。モンテサンコMontesanco https://montesanco.com/ は19世紀に建てられた「カサ・デ・ラ・ビーニャCasa de la Viña=ワインの家」と名付けられたボデガを改装したボデガです。オーナーのマリア・サンチョMaría Sanchoさんが畑から案内してくださいました。傾斜地にあるブドウ畑は昔ながらの段々畑を整備して使おうとしているところでした。古い樹は貴重です。ボデガには昔の発酵・貯蔵槽が残されていて、ワインの保存に使われていました。

 次はコビニャスCoviñas https://covinas.com/ 。統制委員会会長、ホセ・ミゲル・メディナさんが社長を務める、DO最大のワイン・メーカーです。ブドウ栽培農家3000軒が属する村々の協同組合のワインの商品化を担う会社です。そのブドウ栽培総面積は10,000Ha. 2022年には世界最高の協同組合(500Ha 以上のクラス)Best Cooperative Winery over 500ha. Certified by DWM(Deutshe Wein Marketing)に選ばれています。この日は輸出部長のマヌエル・パルドManuel Pardoさんが、大規模かつ自動化が進んだボデガやラックに6段に積まれた熟成樽の倉庫を案内してくださり、マーケティング&広報担当のパトリシア・アルバレスPatricia Alvarezが試飲を担当してくださいました。

 昼食後はベガルファロVegalfaro https://vegalfaro.com/es/bodegas-vegalfaro/ を訪問。まずはオーナー醸造家のロドルフォ・バリエンテRodolfo Valienteさんと樹齢数十年のボバルの樹を見に畑へ向かいました。ロドルフォさんが全力を傾けて守っているワインの源です。しっかり根付いた時の流れを感じさせてくれる樹です。テイスティングルームは総ガラス張りで、オーガニックが前提のロドルフォさんらしい自然の中にいるような雰囲気の中で試飲させていただきました。

 この日の最後はシエラ・ノルテSierra Norte https://www.bodegasierranorte.com/ です。ボデガは自然の傾斜地を利用した設計の現代建築です。駐車場レベルから見ると2階にあるテイスティングルームはガラス張り。1階は醸造設備、地下が樽熟成庫です。いずれもシャープなデザインが素晴らしく、機能的なつくりをしています。オーナー醸造家のマヌエル・オルモManuel Olmoさんと輸出部長のホセ・カントンJosé Cantónさんと一緒に試飲したのち、レケーナの町に晩ご飯を食べに行きました。

そしてこの日は完成間近なシエラ・ノルテのホテルに泊めていただきました。名誉なことに、最初の宿泊者になりました。ホテルの部屋も超モダンで快適。朝はすぐ目の前のブドウ畑を散歩できました。ゆっくり泊まりたいホテルです。

 

9月26日(火)

 最終日は朝一番にフィンカ・コルビFinca Cor Vi https://closcorvi.com/ へ向かいます。大きくFINCA COL VIと書かれた、分かりやすい入り口の門。塀が低いので中が見えているのが田舎の農場っぽくて親近感がわきます。醸造家のヨス・ロペスYosu Lópezさんが迎えてくださいました。まずは畑の見学。真っ赤な粘土質から石ころゴロゴロ、白いぼそぼその土など、いろいろな土壌の畑があります。ボデガに戻ってくると、入り口にコンテナが。これは簡易冷蔵倉庫として使っているそうです。面白そうなことをしていそうなボデガです。

 次は最後のボデガです。フィンカ・サン・ブラスFinca San Blas https://fincasanblas.com/ 。フィンカ(広い土地付きの所有地)というだけあって、小高い丘あり、森あり雑木林あり。そこここにブドウ畑も見えます。自然の中を散策しながら到着したのはブドウ畑のなかの、小高い丘の上の大きな木の下。ここで白とロゼの試飲をしました。経営者のアントニオ・サオネロAntonio Zahoneroさんの解説で、醸造家のニコラス・サンチェスNicolás Sánchezさんも輸出担当の馬場加恵さんも交えてピクニック感覚でした。試飲の続き、赤はボデガで。通りがかりに見た森の小道(=ラ・センダ)がそのままラベルの絵になっているワイン「ラ・センダLa Senda」もいただきました。この道がボバルの成功へと続きますように。

ボデガを後に、レケーナ・ウティエル駅15:34発でマドリッドへ向かいます。到着した時は豪雨と雷で何も見えなかった駅も、この日は白日の下にくっきり姿を現しています。みっちり7日間過ごしたDOウティエル・レケーナともお別れです。

 

2024年、DOウティエル・レケーナ情報は日本語版ホームページhttps://www.vinos-utiel-requena-jp.com/ をベースにSNSで情報を発信していきます。お見逃しなく。

最後の写真はボデガス・ビベ Bodega Vibe の白ブドウの地場品種タルダナTardanaです。

 

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